第12話
ショウから聞く彼等の世界のパワーバランス。
それは今のショウ達の立場の微妙さを理解する上で重要なところであった。
「我々がこちらに来たのは、ベ-タ界の命運がかかるからだ。私の国がどういう立場をとるかはBELL国にとっては次の行動を決めるファクターなんだ。それをナイルもサキもわかっていない。XN国に従属するにしろ組むことを認めたらただちにBELL国は戦線布告するだろう。」
スグルには理解しがたい部分もあるが、両国が団結することでその後の均衡が崩れるのであればむしろ国際的な失敗になる。スグルは完全同期解除をしてショウと代わる。
「ヒデさん、サキの痕跡とか追えないでしょうか?やはり少し話し合うべきだと思うんです。」
ヒデは首を振り、「無理だ、このやりとりは痕跡が残るようなものではない。完全同期でなく、催眠状態で操っているのなら思念波レベルだ。何かで補足しようとしてもノイズと区別できない。」
思念波レベルか、やはり会話波を飛ばして会話するしかないのか?それをむやみにやると大騒ぎになる。
しずかは先日イズミと対峙した時のことを部屋で思い返していた。お正月もインドア派のしずかはゲ-ムと読書に明け暮れていたが、いつもどこかで考えていた。「あの人、どこかで。」あの時はむしろ戦いはサリーに任せていたのでしずかは周囲に気を配れていた。誰だったかな。そこにあみからメ-ルが来て、皆で新年会をすることになった。
あみの家近くのファミレスで新年会セットを用意して皆がしずかの合流を待っていたが、しずかと会うなり、スグル達は先日のヒデの同期相手やヒデの考える同期相手の傾向と仮説を話す。
「なるほどね、確かに身近な人に多いのは不思議だけど。そう考えればそうね、カレンさんは少し縁としては外れるのかも。だからイズミさんは。そうすると、サキさんが来るとすれば、あっ!」
あまりの大声に、「うっ」ヒデは餅をつかえそうになる。
「そうだった。私、あの人どこかで見たと思ってた。」しずかは慌てながらスマホでググって見せる。「この人がサキさんの同期相手、坂上先生よ。」スグル達は驚きの余り呆然とする。
「そうか、しずかは戦いには関与しなかった分周りがよく見えてたのね。どうして黙ってたの?」あみが聞くと、「どこかで見たような人だったけど思いだせなかったのよ。遠かったしね。はっきり示せる自信がなかった。イズミとメールのやりとりをする中で学校写真の一部に写りこんでた。この人よ、間違いない。」しずかはその学校写真を皆に見せる。すごく小さいが確かに似ている。「私もこの人だと思うわ。」と現場で見てもいたあみが追認する。スグルは急に不安になる。イズミは大丈夫なのか。坂上先生は学校で何かの準備をしているかも。
最初4人での新年会だったが、途中で杏から連絡が入り、拓哉と一緒に合流することになる。「何か面白いメンバーね、紹介して、あみ。」と妹分のあみに命じる。一通り紹介し、杏たちについてもあみが皆に紹介する。「なるほど、皆さん、よろしく。ところでスグル、バンドの練習は!」
スグルは頭掻きながら「ごめん、残りの冬休み、捧げるよ。」杏は当然と言う感じで腕組みポ-ズをする。横から拓哉が「皆さんも来てくださいね。」とバンドフェスのビラを皆に渡す。
チラシを見て、「ちょっとこれ!」としずかが指さす。
そこにはフェスの会場が書いてあり、イズミの通う学園だったのだ。
杏と拓哉はキョトンとしていると、スグルが慌てて、「この学校の先生が山田先生の課題論文についてコメント出していてそれをこの間読んでレポートにも書いたんだ。その愚痴をこぼしてたのさ、二人も知ってるだろう?」
杏は少し笑いながら、「ああ、シュレディンガーの猫ね。まああれは寝てたスグルにも非があるけどでも論文は面白かったんでしょ?」
スグルも笑って「確かにな。でもこの学校ってバンド活動やってたかな?」
あみが出場校を見ると「出場するバンドは1つだけね。しかも企画枠ね。先生が出るのかしら?」
「まあ、ライバルではないわねー。ライバルは瀬名学園よ。あみは私達応援するよね?」
あみは「もちろんです。でもうちのバンド、そんなにいいですか?」
拓哉が横から「ああ、手強いよ。」というと
「ああ、まあ頑張ろうよ。2/14の土曜日ね。」
スグルはとにかくまとめにかかり、あみを送ると言って皆と別れた。
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