第9話

期末テストが終わり、高校2年最後の模試が近づく。スグルは久しぶりにリストバンドを外して眠りについた。試験前にはリストバンドを外さないとどうも記憶の定着が良くないのだ。眠りにつくとよく見る夢は、ベ-タ界からの来訪者とのファーストコンタクトの夢だ。


それはハロウィンの新宿での夢だ。操られているようなイズミからいきなりの攻撃をかわした後に

あみとカフェに落ち着くと

「あれでも同期はできていないのか?」スグルは驚き意識内でショウに聞く。「ああ同期はできていない。つまり一方通行の夢レベルだよ。だからサングラスで見えない。あれは寝ているイズミを夢から操っているんだ。」

「しかし、あの会話波や高周波を飛ばしたのは?」

「あれは思念波の応用。同期する機械無しでできる。威力は大したことはないがな。ただあれをするにはイズミに素養が必要だがね。イズミは潜在的に思念波を物理的に扱うことができるのだろう。この世界で念力と呼ぶ類のものだ。たまたまとは言えやっかいだな。しかし、こんな暴れ方を一方方向での制御でこちらの様子も知らないまま行うのは危険とは思うが。まあある程度目算で大丈夫と考えたのだろう。」

「あれはカレン先生なのか?」

「少なくともイズミに入り込めるのは彼女だ。しかし、声の調子がかなりヒステリックだった。あれからするとカレンも操られているのかもしれない。おそらくそうだろう。カレンはあんな無茶しない。」

あみは「もう少しよく観察してから逃げるべきだったかな。」とスグルに言うが、

「いや、こちらをまだ認識されたくないと思ったんだ。でも考えてみるとイズミの夢の中で、彼女に会った我々のことは知られているのかもしれないな。ただ、今は対峙する準備ができていない。イズミが使う思念波の飛ばし方とか少し備え方を訓練する方がいいかな。」

あみは頷くと「しずかにも言っておくわ。イズミとの接触を控えるようにね。」

あみはしずかには警戒するように伝えた。


しずかにはその後しばらくの間何度か連絡があったらしいがスル-しているとのこと。

今後どうするべきなのか?イズミを救うにも意識下で機械無しで入られていては、待てよ、機械無し?有り?そうか!できる気がする。

「気がついたね。ショウ、そう、打つ手はある。ヒテさんに会いに行こう。」とショウが呼びかけた。


「あんな男がタイプなのか?私には気がしれないけど。」とハナ。

「ハナさんはショウさんがそばにいるようにも感じて私がスグルさんと付き合うのは悪くないでしょ?」

とあみが言うとハナは黙ってしまう。「ハナさんにとってショウさんは、、」と話すと遮るように「ショウ様はご主人様です。」

ハナはさらりと言う。あみはつまらなそうに「はいはいわかりました。でも私達は勝手にしますので構わないで下さいね。」

「知ったことでない。」ハナのうんざりした声を聞きながらあみは眠りについた。

しかし、イズミの変わりようには驚いた。あんなことを仕掛けてくるからにはスグルさんの言うように備えは必要かな。何かいい方法がないかしら。素養が無くてもリストバンドがあれば思念波飛ばしはできるような話だった。あみは寝る前にハナに話しかけある約束をした。


しずかは密かに心配していた。実はしずかはイズミにいろいろ話をしていて、イズミから誰が作ったのかを聞かれヒデのことも話してしまっていた。ヒデの身に何かあったら私のせいだ。

ただ居場所などは話してないし。。。しかし、そのスジの研究者でつくばの研究所勤務で絞り込みをすれば辿り着くのは可能か。まずあみにはlineで伝えてお兄さんに警戒するように伝えてもらう。


しばらくして、イズミから仲間と秋葉原で落ち合うから貴方も来ない?と連絡が来た。明らかにこちらとコンタクトしたがっている。スグルやあみには連絡をしておく。仲間と言うのが気になるが懐に飛び込む準備が私にはない。スグルはしずかには都合がつけば行くくらいの返事をすることを勧め、しずかはそうするが、イズミからは秋葉原の駅から少し歩いた餃子屋さんの前で会うとの返事がくる。ある意味挑発だろう。

 しずかはどうしようかと悩み、サリーに意見を聞いてみようとリストバンドをONにする。意識下でサリーに呼びかけると、「話はわかったわ。でも話をしたのは軽率でしたね。もし行くとしても私もお伴していますので大丈夫です。そして行くなら少し練習してからになります。」

「練習?何の?」しずかが聞くと「もちろん、戦いのです。」

「え?」

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