息子にモータースポーツ、レースをさせたい父親とゲームクリエイターになりたい子供の現代ドラマ 〜一途なヒロインを添えて〜 prototype
#52
第1話 お前もレーサーにならないか?
当時、幼稚園児だった僕はトロフィーや精密なモデルカーがたくさん置かれたリビングで、お母さんと一緒にテレビを見ていた。
「カーナンバー1番、ホシノ シンイチ! 圧倒的な強さでGTC500のレースを制しました! 今回も優勝賞金1000万円は彼の物です! 今シーズン始まって3連勝! 一体どれだけ稼げば気が済むのでしょうか!」
その興奮した声を聞きながら、テレビの中で輝く父さんの姿を見ていた。
賞金1000万円、とてつもない大金だ。
それを3回連続で取る父さんは本当に凄い。
でも、僕が欲しいのは遠回しに言えばお金になるのかも知れないけど、ちょっと違った。
僕の名前は星乃 勝利。「ほしの ちゃんぷ」と読む。
プロフェッショナルレーシングドライバーの父が付けた名前。
期待と重圧が詰まった名前だ。
◆
僕は、成績優秀なレーシングドライバーだった父さんに、幼い頃からレーサーとしての英才教育を施され、才能にも恵まれていた。
でも、僕はレーサーというのはあくまで職業という認識で、車自体には正直興味が無くて。
近所に住んでいた幼馴染の女の子と遊んだり、ゲームをしたり、そして少しずつ簡単な物から自分でゲームを作るのが成長するにつれて楽しくなって行った。
僕はファッションにもさほど興味が無く、幼馴染にも「ほしのちゃん、また同じ服! 髪も短くした方が絶対似合うよ! 今度一緒に服買いに行って、美容院に行こう!」と言われたが、それでも興味が湧かないいわゆるオタク系男子だ。
見た目はオタクなのに、体育の授業では、誰も僕に追いつけない。
陸上も、水泳も、余裕だった。
友達がある日言った。
「星乃、なんでそんなに速いの?」
「うーん、普通に走ってるつもりなんだけどな」
本当のことは、言えなかった。
そんな恵まれた肉体を持つ僕だけど、あくまでそれはお稽古事から得た結果だと思っていたから、それを学校で生かすつもりはなくて。
スポーツには興味を示さず、ゲームに熱中して趣味で作った作品を細々とクリエイター向けの支援サイト等で販売し同人活動を行っていた。
発売した作品の売り上げは少なかったけど、多少なりともお小遣いを自分で稼いだ実績は僕の大きな自信となり、故に将来はゲームクリエイターになるつもりでいた。
ゲーム制作は楽しい。
自分の思った世界を思い通りに形にできる。
難しいプログラミングも、そんな思いを形にできるのであれば苦にならず、僕はどんどんスキルを磨いて行った。
そしてある日、僕が大好きだったハックアンドスラッシュと呼ばれるジャンルのゲームを、すごい簡単な物ではあるけれど作る事に成功した。
完成して、無事に動いた瞬間、大きな安心感と共に達成感を感じた。
これがたまらなくて、僕はゲーム制作にのめり込んでいく事になる。
◆
そんな中、ある日プロレーサーの父さん、
「勝利……ライセンスを取ってプロのレーシングドライバーになってくれないか?」
◆
小学二年生の冬。
将来の夢を発表する席において「しょうらいはゲームクリエイターになります!」と声高らかに宣誓し、授業参観に来ていた父さんの表情を凍らせた時から父さんは徐々に僕のトレーニングの量を増やして行って、様々な方法でドライビングのスキルを向上させていった。
まずは手始めに、父さん用しかなかったレースシミュレーターがもう一台、小さい物が増えて、僕もシミュレーターでトレーニングできるようになった。
時にはプログラミングの授業で満点を取ったらお小遣いをあげるから
またある時には欲しいゲーム機を買ってあげるからトレーニングをしなさいと言われた事もあった。
そして、レースは肉体を使ったスポーツだけにみられがちだけど、心理戦、頭脳戦としてもとても難しいことをするから、うまくなるとゲームも上手くなるぞ!とおだてて来たり。
そんな中、小学三年生のある日。
リビングでゲームを作りながら遊びつつ楽しんでいた所、また「今ほしいものはないか?」と父さんから聞かれた。
その時にはもう簡単なものではあるけれど、ゲームの開発環境も買ってもらえていたので、「もうあるから大丈夫だよ」と言って断ったら、「……パソコンなら、もっと自分で好きなゲームを作れるぞ!」と言って、僕の興味をひいて来た。
確かに今家庭用ゲーム機にあるプログラミングソフトよりも、パソコンの方が遥かに高度なソフトが使える。
そうしたら、もっと今以上に好きな様にゲームが作れる。
父さんのその誘いの言葉は、今の僕にとってとても甘美なものだった。
もっと思い通りに自分のゲームを作ってみたい、もっと楽しいゲームを作りたい。
そう考えていたら、父さんが更に言葉を続けて来た。
「ただし、勝利。父さんとレースをしよう。」
「ゲーム業界だって競争が激しいだろう。勝利が将来成功するには、人には無い特技が必要なはずだ。本物レースの経験があるゲームクリエイターなんて、世界に何人いる?」
「もしレーシングゲームを作る時、実際にドライブできる開発者の価値は計り知れないぞ。体験しておいて損はない」
確かにそう言われてみればそうだ。特技があるに越した事は無い。
それに、レースをするだけでパソコンを買って貰えるならそんなに楽な話はない。
「勝利、ただし条件がある。一度だけ本気で父さんとレースをしてくれ。勝利の才能を確認したいんだ。もし本当に向いていないなら、二度と強要はしない。パソコンなら勝敗に関係なく買ってやる」
正直レースなんてしている時間があるならゲームを作っていたいんだけどな……でもその条件なら……。
「ん〜〜〜〜!! わかった! お父さん! 勝負だよ!」
その言葉に父さんは笑顔を浮かべながら、「わかった、約束だ。一番良いのを買ってやる」
「そうだ、せっかくだ。彼女の
「父さん! 円は彼女じゃなくて幼馴染の親友だって!」
「わかったわかった、親友な。ともかく、いっしょに連れていってあげたらどうだ。カッコ良い所、見せてやれよ」
「もう! お父さん!」
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