第2話「仲良くなるに越したことはない」



私は新しく家族になった光世こうせいさんとお母さんを見送った。志希がどこにいるのかと問われると、どこにいるのか分からないが正解だろう。リビングにいなかったし自分の部屋にでもいるのではないか。


もう少しでお昼の時間でお腹がすいてきたような気がした。それはあの子────志希も同じだろう。冷蔵庫には何があったかな。









ご飯を作り、そこにいるであろう志希の部屋にノックをした。


「……なんですか、なんか用でもあるんですか?」


相変わらず無愛想だなぁなんて思いながら私は言った


「ご飯できたから食べよ」


志希は少し驚いたような顔をしてすぐに顔を俯き……


「……分かりました、扉の前に置いといてください……置いたら扉をノックし────」


「え?一緒に食べないの?」


そう言うと少し嫌そうな顔をしたあと仕方なさそうに志希は言った


「はあ、分かりましたよ……お父さんからも仲良くなっとけって言ってましたし……表面上だけでも仲良くなる練習をしておいて越したことはないですね」


言葉の端々に棘があるような気がしたが、まあ気の所為だろう……


「じゃあ降りてきてよ」


「……」


無言で頷かれ一緒に階段を降り、リビングへ向かったがその間会話はなかった







「……ふーん、美味いじゃないですか」


喜んで貰って何より……と言いたいところだが、上から目線なのが少しムカつく


「そっか、なら良かった」



「……桃です」


桃?桃ってあの果物の桃


「ん……?桃食べたいの?それなら後で買ってこようか?」


「……違います私の名前です」


あんなに渋ってそうな感じだったのに急に教えてくれる……どうしたのだろうか。


「え、でもなんで急に」


「話すタイミングが分からなかったのと、表面上だけでも仲良くするつもりなのに下の名前を知られてないのは……あれだと思ったので、勘違いしないでくださいね」


相変わらず酷い理由だ。そんなに表面上だけでしか仲良くなりたくないのだろうか……


「なるほどね……まあ私は志希って呼ぶけどね」


そう言うと志希は苦虫を噛み潰したような顔をして……


「いいですよ別に……」


悔しそうな声を出した


「そんなことよりも────」


「そんなことよりも!?」


何かおかしかったのか、私の話を遮ってきた


「そんな意味がわからないような顔して…………もういいです……食べ終わったので部屋戻ります」


そうして志希はイラついてるような足取りで2階にある部屋に戻って行った……

何か怒らせること……したかな?









side志希





なんなんだほんとに。こっちが仲良くしてあげようと歩み寄ったら……もういい



もう人に期待することを辞めたのだ。


あの人も結局他の人と同じなんだろう


あんなに邪険にしたのに、わざわざ私の部屋にまで来て「ご飯作ったよ」なんて報告をしてきて。


最初は周りの人達の同じように接したが、邪険にした私に対してご飯を作って……さらには一緒に食べようなんておかしい人だと思った


それと同時にいい人なんだなってことも分かった


ただ、私が名前を言ったのにその名前で呼んでくれたりはしてくれなかった。別に悲しいって訳じゃない。お父さんに仲良くなっとけって言われて……それで表面上だけでもと思ったから……



しかも名前の話をそんなこと呼ばわり……いい人と思ったが、無神経なとこがあるようだ。


ただ、他の人よりかは────マシ……かな?











志希が怒って部屋に戻って行ってしまった後、私はどう志希の機嫌をとるかを考えていた。喧嘩?いや一方的に怒ってきただけかな……まあそれで志希が怒っている状態だと、私も私で生活しずらいし。



やはり志希の名前を呼ばなかったのがダメだったのか?私的には志希って呼ぶのが少し慣れてしまったから────という意味で言ったつもりだったのだが、志希から見たらお前なんかの名前なんて呼びたくないと言われてるも同然なのではないか……



今すぐ謝りに行こう。そうしよう。









志希の部屋の前に来てノックをする……が返事は来ない


「志希、ごめん怒ってる?さっきの謝りたくて」


「……」



返事なし……これは中々苦戦しそうだ……



だが私は諦めない……そう決意し声をかけ続け30分が経った



「あーあー!もううるさいです!分かりましたから!もう許します!」


もう少しで私が諦めようとしていたが、その前に志希が折れたようだった


「ほんと?!」



「ほんとです……ほんとですから……もう呼びかけてこないでください」



「やっぱりまだ怒って────」


「怒ってないですから!」


「そんな強く言って……やっぱり怒ってるんじゃないの?!」


「扉まで遠いから大きな声出さないと行けないだけです!」


なんだ、そういうことだったのか……もう怒ってなくてほんとに良かった。


「じゃあ入るね」


「なーんでそうなるんですか!?」


そんな言葉も聞かず私は志希の部屋に入った……案外部屋は片付いているようで……というか引っ越したばっかだから物が少ないのか


「やっぱり怒ってたのって名前呼ばなかったから?」


「……まあそうですけど、別に悲しかった訳ではなく……何してるんですかっ!」


悲しかった訳ではないと本人は言っていたが私にはそうは見えなかった……懺悔と共に志希の身体を抱擁した


「親友がいるんだけど、その子悲しくなった時に抱きついてあげると喜んでくれるの」


「そうなんですね、触らないでもらっていいですか」


無表情でそう言われ悲しくなりながらも抱擁を解除した。悲しくなったから誰かに抱きしめて欲しい。



「ご、ごめんね」



「いえ、でもその親友さんのこと聞かせてくれませんか?」








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完璧な姉妹にはなれない……いやならない! ポンビン @Ohuton29

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