第22話 強いられる暴力
「女店主、こいつらは常連か?」
「全員よそ者の新規客ばかりだねぇ」
「なら、よそ者の俺が気に食わないってわけじゃないようだな」
「そうかもね」
店内にいる俺たち以外の客は物騒にも獲物を手にし始めると、俺の元へとにじり寄ってこようとしていた。
さて、見たところ相手は物理攻撃が得意そうな肉体派の連中だ。
HPを鍛えた連中にとって俺のMP吸収による効果は薄い。つまり、俺は嫌でもこいつらとの肉弾戦を強いられるというわけだ。
そして、それは俺を相手にするという前提の布陣であり、こいつらは俺を消すために雇われたという予想がついた。
そんなことを考えていると、一人の男が短剣で襲い掛かって来た。
あいにく、俺は得物を持ち合わせていない上に、両隣の連れは役に立ちそうもない、俺がやるしかない状況だ。
それにしたってこれで何度目の襲撃だ?
しかも、襲ってくる奴らはどいつもこいつも相手にならない雑魚ばかりだ。こういう時はそれ相応の役職を持った手ごたえのありそうな奴がやりに来るもんじゃないのか?
まぁ、それだけ俺はなめられてたって事らしいな。それにしても、こいつの攻撃はずいぶんと遅い。
そうして、俺は襲い掛かって来た男の短剣を持つ手首に手を添えて、軌道をずらし、ついでに勢いも加えてやる、その勢いのまま短剣はカウンターへと突き刺さった。
男は深く刺さった短剣を引き抜くことが出来ず、引き抜こうと必死になっていたがすぐに素手での攻撃に切り替えると、俺の顔めがけて早い拳が飛んできたが、それを受け止めた。
見たところ「素早さ」が高めの「攻撃」低め、「魔力」「MP」については未知数だが俺を標的にしてきたという事はこの二つは捨てているのは間違いないだろう。
つまり、こいつは「素早さ」に特化した物理型だ。
「おい、素直に雇用主の事を吐けば痛い思いをしなくて済むぞ」
「メフィウス死すべし」
・・・・・・なんとも物騒な言葉だ。だが、口数の少なさだけは褒めてやってもいい。ヒットマンとはこうあるべきだ。
「そうか、じゃあ実験でもするか」
俺は、短剣の男を殴り飛ばすと奴は店の地面に転がったがすぐに立ち上がった。その様子は実にタフだったが、その体制は隙だらけであり、俺はすかさず魔法を打ち込んでみた。
発動と、到達速度の速い雷属性の魔法を打ち込むと、それは短剣の男に命中した。
体が痙攣しながら膝をついた短剣の男を眺めつつ、それでも丈夫に意識を保っている。
こいつは相当に調整されたヒットマンだ。魔法耐性の基準である「精神」も十分に鍛え上げられているらしい。
よほど俺への対策が万全に行われているという事だな。そうして、俺は短剣の男に襲い掛かろうとしていると、周囲の奴らが立ちはだかって来た。
こいつらも、短剣の男同様に調整が入った野郎共だろう。
「お前らが俺対策を講じているのは分かった、加えて、力を合わせて数で勝負しようというレイドを仕掛けてきたのも評価する。だが、戦略がいまいちな上に実力が足りねぇな、ここは大人しく雇い主を白状した方がいいぞ」
俺は純粋な助言をしているつもりだったが、聞く耳を持たない連中は俺に襲い掛かって来た。
この狭い店内で短剣ならまだしも、ソードやサーベル、斧やハンマーといった武器を振り回そうとしている奴らに、俺はあきれた。
これじゃあ、まともに肉弾戦する必要も無く避けるだけで同士討ちで終わりだ。
・・・・・・・いや、このチャンスを逃すわけにはいかない。
今後俺が動くならでこれ以上の雑魚を相手しないためにも、ここはひとつ圧倒的な力量を見せつけ、そのうえでそれを知らしめる必要性がある。
つまり、あの短剣男一人を残してほかの奴らは全員なぶってしまうのが一番だろう。
いくら調整を加えた優秀なヒットマンであろうと、その悠長な動きを確実にとらえ、その上でヒットマン共の急所に確実に打撃を与えると、奴らは情けなくそのばで 崩れ落ちた。
久しぶりの肉弾戦だが、まだまだ体は鈍っていない。むしろ、この久しぶりの感覚にまだまだ体がうづいてさえいる。
それにしても、ここ最近じゃ一番といっていいくらいに頭がすっきりして体が思うように動く。これがマスベに貰った感情を抑制する眼帯の効果ってわけか?
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