第11話 第二王子の展望
「それで、第二王子とやらが俺に何の用があるっていうんだ?」
「ふむ、その話の前にお前が本当にMPを支配する力を持っているのかを確かめたい、見せてみろ」
「偉そうな奴だな、もう少し頼み方ってもんが・・・・・・」
俺が喋り終わる前に、グルーグの側近である眼帯の男が俺に向かって魔法を打ち込む素振りを見せ始めた。そして、側近の男の手のひらから雷属性の魔法がわずかに見えた瞬間、俺は眼帯の男のMPを吸い取った。
「ほぉ、対象のMPを奪い魔法の発動や魔法そのものを無効化させるか、素晴らしいぞメフィウス」
グルーグは興奮した様子で喜ぶ様子を見せた。そして、MPを吸い取られて膝をついた従者をあざ笑っていた。その様子に、俺はあきれてものも言えず、すぐにマスベに視線を向けた。
「なぁマスベ、俺はギルドマスターだったんだぞ、それがここ最近はこういう舐めた態度の奴らばかりだ」
「あなたはあまり自分の力を誇示しないから、以前からよく狙われてたの知らないの?」
「いや、前はこんなひどくなかった」
「それはきっと、あなたの部下が優秀だったからでしょ?」
「ふざけんな、ギルドマスターを見捨てて田舎に帰っちまう様な奴らが優秀な訳ねぇだろ」
「あなたがちゃんと実力を見せないからこうなるのよ」
「その必要がなかっただけだ」
「まぁでも、それだけあなたが力ではなく人を愛していたって事ね」
「・・・・・・わけわかんねぇ事言うな」
そうして、マスベに愚痴をこぼしていると、グルーグが再び俺に話しかけてきた。
「おいメフィウス、他にも出来る事があるだろう、見せてみろっ」
「これ以上見せる理由がねぇな、とっととてめぇのは話を聞かせろ」
「だめだ、まだ信用ならぬもっと見せろ」
「ちっ、おいマスベ何なんだこいつ、おれは宮廷芸人じゃねぇんだぞ」
「いいじゃない、【MP弾】とか見せてあげなさいよ、あれ本当に便利だから」
「・・・・・・それを見せて、俺に何のメリットがある」
「あなたを貶めた黒幕を教えてもらえるかも?」
「知ってるんだったら今すぐ教えろ、ぶっ飛ばしてやる」
「だから、それを第二王子が教えて貰えると言ってるのよ、そのためなら力を見せるくらい構わないでしょう?」
「しょうがねぇな、おいエスカッ」
エスカを呼ぶと、奴は行儀よく椅子に座って返事をした・・・・・・そして、その隣でそばかす女は菓子をむさぼっていやがった。
「は、はい何でしょうかマスター」
「さっきの奴やるぞ」
「えっ、えっ、さっきの奴というのは?」
俺は指で照準を定めて【MP弾】をエスカに打ち込むと、直撃した瞬間に奴はとんでもねぇ卑猥な声をあげた。そして、その様子にマスベが腹を抱えた笑い始めた。
「あははははっ、なにこの子すごい面白いんだけど、ふふふ、あははははっ」
「また変な声出しやがって、こいつ・・・・・・」
エスカはその場で体をよがらせながら頬を赤く染め上げており、切ない表情をしながら俺を見つめてきた。
「あぁん、だってマスターが突然打ち込んでくるものですから、声が我慢できませんでしたぁ・・・・・・」
「ふふふふっ、巨人族の子も満足させるなんて、素敵ねメフィウス」
「黙ってろよマスベ」
「無理よ、だって面白いんだもん」
笑いのツボにでも入ったのか、マスベはけらけらと笑っていたが、第二王子はどこか真剣な様子で俺を見つめていたかと思うと話しかけてきた。
「メフィウス、お前今巨人族の女に何をしたんだ?」
「MPを打ち込んだ、てめぇが見たがってた能力の一つだぞ、喜べよ」
「それを打ち込むとどうなる?」
「MPが回復するだけだ、要するにMPの譲渡だ」
「つまり、お前はMPを吸収するだけでなく、それを自在にコントロールする事もできるという事だな」
「あぁ」
「では、お前の前では魔法はすべて無意味というわけだな」
「そういう事だ、これで満足か?」
「うむ、であればE7にも対抗しうるというわけだな」
「あぁ、そういや聞きたかったが、そのE7ってのは一体なんだ?」
「親父殿と兄上による狂気の始まり、そしてヴォルト王国崩壊の予兆・・・・・・」
「ポエムはいい、具体的に教えろ」
「【エクストラ・セブン】と呼ばれる解放運動を行う異人の事だ」
「異人?解放運動?」
「そう、彼らはこの世界へとやってくると瞬く間のその才能を開花させ、あらゆる所で【解放運動】を行っている」
「なんだその解放運動ってのは?」
「世界の発展を理念とした運動の事だ、世界中で巻き起こっている」
「それと、俺がどう関係している」
「新時代を語る奴らは魔法による世界の発展を望んでいる。そして、その発展には魔法の源であるMPが必要。つまり、それを支配しているお前が邪魔だという事だ」
「それが理由で俺はこの世界から消されるっていうのか?」
「奴らはそう考えている様だな」
「じゃあ、その異人ってのはなんだ、どこからやってきたやつらだ」
「どこから来たかはわからぬ、だが、我がヴォルト王国でもすでに異人の召喚されている」
「そいつは何者だ、どこにいる」
「現在は国賓として丁重に扱われながら、ダンジョンの探索を行っているとの噂を聞いた。そして、当然のようにすさまじい力を有している」
「・・・・・・確かめたのか」
「うむ、私が送り込んだ刺客はものの見事に追い返された」
「てめぇがどんな刺客を送り込んだかしらねぇが、今いち信用できねぇ情報だな」
「厄介な事に、異人はその力で多くの人々の才能を開花させていることが分かっている」
「他者にも影響を与える力か?」
「うむ、このままでは、ヴォルトの民が異人によって覚醒させられる未来が見えて仕方がない」
「なんだ、怯えているのか?」
「当然、このままでは破滅の未来が待っている。だが、異人の力のほとんどは魔法によって引き起こされている事が分かっている・・・・・・つまり、我が何を言いたいかお前にはわかるか?」
「いいから言えよ、聞いてやってんだぞこっちは」
「うむ・・・・・・お前には生きて、その力を存分に発揮してほしいと思っている」
「はっ、何を言い出すかと思えば、そんな当たり前の事を伝えるためにお前はここに来たのか?それが、お前の望む事か?」
「そうだ、我々が生み出した秩序の渦を乱されては困るのだ、我々が世界の中心でなければならないのだっ」
「へっ、話だけ聞いてりゃ既得権益にまみれた悪い貴族に見えるぜ」
「それは国王である親父殿と第一王子である兄上の事だ、彼らの行いはやがて世界を混沌に導く。世界が異人によって急激に発展することなどあってはならぬ」
「てめぇの話は終わりか?」
「我に手伝えることがあれば何でもしよう、とにかくお前が生きていればいい」
「おい第二王子、本音は俺にその異人とやらを始末してほしいんじゃねぇのか?」
俺の言葉に対して、第二王子は俺の目をじっと見つめていたが、瞼がゆっくりと閉じてため息を吐いて見せた。
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