第10話 世界の意思と悪の道
マスベ・カトリーナの案内でギルド本部の応接室へと招かれた。
だが、そこには見知らぬ男が偉そうに座っており、奴は貴族の様な恰好をして、従者と思われる男を側においていた。
その様子をうかがっていると、マスベが座るように促してきた。
「さぁ座ってメフィウス」
「待て、こいつは何だ」
俺は見知らぬ男を見つめながらそう言うと、従者と思われる男が俺をにらみつけてきた。
黒髪オールバックで眼帯を付けた物騒な面の従者の男、その異様ないでたちを見定めていると、マスベがためいきを吐いた。
「ねぇあなた、この国の王子も知らないの?」
「王子だと?」
「そうよ、誉れ高き【ヴォルト王国】の第二王子【グルーグ・ヴォルト】様よ」
「・・・・・・なぜそんな奴がここにいる」
そうして、俺は改めてグルーグとかいう男を見ると、奴は余裕の笑みを浮かべながら俺を見つめてきていた。
女みてぇに整えられた金色の長髪、整った顔立ち、奇抜なスーツ姿と傲慢な態度は、確かにどこぞの王子と言われるだけの容姿はしていた。
すると、グルーグは俺に向かって話しかけてきた。
「この国の王子である私に、存在理由を尋ねるとは実に面白い男だな、お前」
「冗談を言ったつもりはないが」
「まぁよい、とにかく座るがいいメフィウスよ、私からお前に話がある」
「・・・・・・あぁいいぜ、ちょうど暇だったからいくらでも聞いてやる」
俺はグルーグの言葉通り座ると、マスベが驚いた様子で話しかけてきた。
「あら、ご機嫌ねメフィウス、あなたが素直に座るなんて」
「そんな訳ねぇだろ、とりあえず俺がダンジョンに行っていたわずかな時間に何があったか教えてくれりゃあいい」
「えぇ勿論、それについては私から説明するわ」
「手短に頼むぞ」
「言われなくても・・・・・・まず、あなたのギルドが陥落することになった原因がいくつかある」
「そんなもん、全部プリンスのせいだろうがっ!!」
「落ち着いて聞いて」
「ちっ」
「まず第一に、あなたが死亡したという完璧な偽装工作が行われた。それによってあなたのギルドでは内乱が勃発、それに乗じてプリンス率いるギルドが、あなたのギルドを陥落させたという事になっているわ」
「ほら見ろ、結局あいつのせいだ」
「そうとも言えるけど、問題は偽装工作の方よ」
「あぁ、地上に上がったら俺は死んだことになってやがった、一体だれがやりやがったんだ」
「それについては分からないし、誰もが疑ったわ。けれど、今朝行われた就任式で全能の力が新しいギルドマスターへと渡った時、その疑いは晴れ、誰もがメフィウスの死を受け入れた」
「はっきり言うが、流石に仕事が早すぎやしねぇか?」
「それはきっと、あなたが死ぬはずがなく、おまけに簡単に地上へと戻ってくると踏んでいたからでしょうね」
「絶対プリンスのやろうが企みやがったんだ・・・・・・」
「あなた、本当に彼の事が嫌いなのね」
「当たり前だろっ」
「・・・・・・でも、彼一人の仕業というわけでもなさそうよ」
「何?」
「ちなみにだけどメフィウス、あなた、今日の就任式には間に合ったの?」
「いや、ギルド本部についた頃には撤収が始まってたところだった」
「そう、実はギルドマスターの就任式には、後見人としてヴォルト国王と第一王子が出席していたわ」
「ふざけんなっ、俺の時はそんなのなかっただろっ、もっと閑散としてて、来てくれたやつっていえばお前くらいじゃなかったか?」
「え、えぇ、まぁそれはさておき、これが意味する所は今回の事件は国を挙げての計画だった可能性が浮上しているという事よ」
「俺が一体何をしたっ?」
「一部の有識者の話だと、これから来る新時代にあなたが邪魔だったという話よ」
「またそれか・・・・・・新時代とかいうクソみてぇな奴」
「あなたの持つ、MPを支配する力が世界の発展を阻害するのだとか・・・・・・私の知る限り、あなたを消したい理由はそれで間違いなさそうよ」
「世界の発展の為なら俺の命は軽いってか?」
「すべては世界をよくするため、そのためにあなたはこの世界から存在を抹消された事になったの」
「おあいにくだが、俺は元気ビンビンだ。さっきも殺し屋を追い返した所だ」
「勿論見てたわよ、ちなみに、あなたの暗殺には多額の賞金がかけられているってのは裏の世界では常識みたいよ」
「・・・・・・」
不気味な事を言い始めたマスベは不敵に微笑み、その瞳はキラキラと輝いているように見えた。
「てめぇの目が金色に輝いているように見える」
「あら、私の目は赤よメフィウス、金色になんて輝くわけないでしょう?」
「・・・・・・ふんっ、で、他に知ってる事は?」
「まだ色々あるけど、現状あなたの知りたかったことは伝えたつもりよ、後はあなたが知りたい事によって決めましょう」
「じゃあ、新時代ってのは結局何なんだよ、E7とかいう奴らは何者だ、なんでそいつらの為に俺が死ななきゃならねぇ。それからこの第二王子は俺に何の用だ?」
「じゃあこの後は、第二王子の出番という事で・・・・・・どうぞ?」
そういうとマスベはティーカップを傾けながらグルーグとかいう奴に目線を向けた。すると、グルーグは俺の事をじっと見つめており、その目は悪だくみをしている奴特有のくすんだ瞳をしていた。
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