第21話:クラシックは死なない【序章】──旋律が生き延びる5つの物語

かつて誰かが書いた旋律。


百年の時を経て──。


ディスコで踊られ、バラードで涙に変わり、シンセサイザーで叫ばれ、そして、演劇で再生される──。


なぜ人は、過去の音を何度も“引き返し”、再び奏でようとするのだろう。


それは単なる“リスペクト”なのか?


それとも、“まだ終わっていない感情”の回収なのか。


クラシック音楽は、過去の遺産ではない。


それは、今もポップスやロック、映画音楽、舞台芸術の中に息づいている“旋律の遺伝子”だ。


誰かがバッハを弾き、

誰かがラフマニノフで泣き、

誰かがベートーヴェンを踊らせる。

そして、誰かがモーツァルトを舞台に引き上げる──。


それぞれに、引用の理由があり、

そこには、時代と感情の文脈がある。


この連作では、クラシックの旋律が、どのように再構築され、どんな意図を持って“今”の音楽に宿ってきたのかを。


5つのジャンルを通じて読み解く。


《バラード》

涙ともにラフマニノフの音色を継ぐ。


《サイケデリック》

夢の中でバッハを奏でる。


《プログレ》

ムソルグスキーをシンセで盛大に爆破する。


《ディスコ》

ベートーヴェンを今日も踊らせる。


《そしてJ-POP》

モーツァルトを女性にし、劇場に立たせた。


引用は模倣ではない。


それは、過去と現在をつなぐ“対話”だ。


旋律は死なない。


時にかたちを変え、装いを変えて、それでも人の心に入り込む道を探し続けている。


──まずは、あるバラードに宿ったラフマニノフの記憶から始めよう。




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