第4話 召喚したゴーレムたち 前



ダンジョンのレベル上げにゴーレムを使う?

……どうやって?


「よいか、太一。

ダンジョンを育てるのに必要なのは、魔物の死体と魔石じゃ。

もちろん魔物でなくとも、レベルの高いこの世界の人種であれば、ダンジョンの成長の糧となろう。

じゃが今、あの森に人種はいないと思われる」


……あの森って、俺がいたあの森か。

人種がいないってのは、人の集まっている街や村などから離れているってことだな……。


「パルは、そんなことまで分かるんだな」

「人種がいないってことか?

当り前じゃろ。ワシは森の中に漂う、魔素の塊を集約して生まれたのじゃ。

魔素の塊として漂っていた時の光景は、一応記憶としてあるからのう」

「へぇ~」


森の中を漂う魔素の見ていた光景が、記憶としてある。

……もしかしてその記憶を頼りに、魔物をダンジョンに集めていたとか?

それで、そんな記憶が残っているのかもな……。


「話を戻すぞ?

ワシの記憶が確かなら、この近くにはオークの集落があるはずじゃ。

数は、五十体近く居るはず。

そこでお主にDPを使って、オークを倒すことのできるゴーレムを召還してほしいのじゃ」

「オークを倒すって、そんなに強いゴーレムを召還できるのか?

………今確認したが、ゴーレム召喚に必要なDPは一体一万五千DP。

そこにゴーレムのレベルを追加すると、一レベルごとに五千DPが必要だ。

オークの集落を襲うとなると……」

「いやいや、太一に召喚してほしいゴーレムはそれじゃあない。

特殊ゴーレムの方じゃ」

「特殊ゴーレム?」


パルにゴーレムを召還してほしいと言われて俺は、すぐにDP交換画面を開いた。

これは、このダンジョンを造る際にも開いた画面で、現在のDPと交換できるモノが表示されている。


俺はその交換リストの中からゴーレムの項目を選択して、パルに説明したんだ。

そうしたら、普通のゴーレムではなく特殊ゴーレムだと言われる。


「……特殊ゴーレム。

召喚者の知識に依存したゴーレムで、レベル抜きで強い個体を召喚できる。

ただし、あくまで召喚者の知識次第なため、弱く役に立たないゴーレムを召還してしまうことがあるので注意が必要、ってあるな……」

「そう、つまりは太一の知識が頼りになる。

うまくすれば、DPを多く使わんでも強いゴーレムが召喚できるはずじゃ」


……確かに、特殊ゴーレムの交換DPは一体三万DP。

手持ちの残りDPが、九万八千二百DP。


……俺の知識で、強いゴーレムを召喚できるのか?


「……今の所持DPで呼べる特殊ゴーレムは三体。

この三体すべて、強いゴーレムとして召喚できるかは俺の知識次第か……」

「大丈夫じゃよ、太一。

ワシにある、お主との共通知識で分かる。

必ず、強いゴーレムを召喚できるとな!」

「……分かった。

それじゃあ行くぞっ!」

「こいっ! 太一!」

「DP三万使って、特殊ゴーレムを召喚ッ!!」


そう叫びながら、画面の召喚を指でタップする。

すると、俺とパルの目の前の地面に、召喚魔法陣が出現した。


「「おおっ!」」


俺もパルも、どんなゴーレムが召喚されるのか興味津々だ。


召喚魔法陣が出現した後、その魔法陣の上に周囲から光が集まって人型を作り始める。

そして形がある程度定まると、眩しくて直視できないほどの光を放った。


「眩しっ!」

「!?」


だけどすぐに輝きは治まり、俺たちがゆっくり目を開けるとそこには、二メートルほどの黒い衣装に身を包んだ筋肉ムキムキの男が立っていた。


「……」

「おお! 映画なんかで主役をはれるほどの特殊訓練を受けた元軍人をイメージしたが、思ってた通りのゴーレムを召喚できた。

しかも軍隊式特殊技能に、暗殺術や格闘術までスキルにある!

まさに、プロフェッショナルなエリートだ!

うまく召喚できたな、パル!!」

「……」

「……パル?」


下を向いて黙ったままのパルに、どうしたのかと心配になって近づくと、いきなり胸倉を掴まれて押し倒された。


「どういうことじゃ、太一!?

ワシは、人型ロボットのゴーレムを期待しておったのじゃぞ!

お主の知識にあった、勇者シリーズやエ〇ドランシリーズ、他にもモビル何とかにバル〇リーなど、そんなのを期待しておったのに……」


そう怒鳴った後、魔法陣の上で俺たちを見てオロオロしているゴーレムを見る。


「……それが、あのようなゴーレムを召喚するとは……」


そう言うと、俺の胸倉を掴む手が震えはじめる……。

そしてパルは、自分の顔をギリギリまで俺に近づける。


「よいか、太一っ!

次こそは! 次こそは、人型ロボットのゴーレムを召喚するのじゃ!

頼むぞ、太一!

ワシに、ロケットパンチとやらを見せてくれ!?」

「……」


……何そのロケットパンチって。

確かに、俺の知識の中にあるよ? 戦うロボット物のアニメとかが。

中にはもちろん、ロケットパンチを繰り出すロボットもあるけど、全部全長十メートルを超えているんだよ!


大きすぎて、召喚できないって!

それに比べたら、いいじゃないか特殊兵士のゴーレム。

魔物相手でも、しっかり仕留めてくれそうだよ?


……まあ、集団相手だと心許ないけど……。



俺とパルは体勢を立て直して、配置についた。


「……次、召喚するぞ!」

「おう! 次こそ頼むぞ、太一!」

「……DP三万使って、特殊ゴーレムを召喚ッ!」


そう言って画面の召喚をタップすると、再び地面に召喚魔法陣が出現し、光が人型を作り始めたかと思えばすぐに眩しい光を放つ。

そして召喚魔法陣の上には、特殊な服を着た一人の女性が立っていた……。


「よしっ! どうだパル、これは気に入ってくれる「何しとんじゃ、太一―ッ!!」」


特殊ゴーレムが召喚されるや否や、再びパルが俺の胸倉を掴んで押し倒した。

しかも、かなりの剣幕みたいだ……。


「ワシは伝えたはずじゃよな!

人型のロボットを頼むと! それが何であのような女子の、それも弱そうな見た目になるんじゃ!」

「お、落ち着け、パル」

「これが、落ち着いていられるかっ!

ワシの、……ワシのワクワクを裏切りおってからに!」

「せ、説明するから……」

「そうじゃ! 説明してもらおうじゃないか。

話せ! さっさと話せ!」

「と、とにかく落ち着け。

ちゃんと、説明するから……」


パルの奴、そんなに楽しみにしていたのか?

人型ロボットのゴーレムの召喚を。

今回召喚したゴーレムだって、目的に沿ったものなんだけど……。







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