第3話 ダンジョンコアとの問答
俺が振り返ると、そこには巫女服を着た金髪碧眼の美少女がいた……。
「……だ、誰?」
「ん? 何じゃ、分からんのか?
ここはダンジョンじゃぞ? それを考えれば分かるであろう」
……確かにここはダンジョンの中、らしい。
らしいというのは、ダンジョンマスターとしての感覚で分かるだけだ。
で、目の前の美少女が誰かも同じように感覚で分かる。
分かるんだけど、俺の中の常識がなぜか認めるのを拒否していた。
「……も、もしかして、ダンジョンコア?」
「正解じゃ!」
俺の答えに、美少女は嬉しそうに喜んでいる。
……喜ぶ姿が眩しい!
「ど、どうしてそんな姿に?」
「ん? 気に入らんか?
お主の知識の中にあった、『金髪美少女』というものになってみたのじゃが……。
もしかして、嫌いな姿じゃったか?」
「いやいや、嫌いどころか大好きです! ありがとう!」
「フフッ、喜んでもらえたようで何よりじゃ。
……ところでお主、そろそろ名を教えてもらえぬか?」
俺がお礼を言うと、ダンジョンコアは本当にうれしそうに笑う。
どうやら幻でもなく、本当に理想の美少女が目の前にいる……。
「……えっと、 俺の知識が分かるなら俺の名前も分かるんじゃないの?」
「お主の知識で分かるのは、共有しとる部分だけじゃ。
お主の趣味趣向とか、全部わかっとるわけではないぞ?
……それとも、全部わかっといたほうがよかったか?」
「……よ、よくないです! 個人情報は重要です!」
「ならば、まずはお互いの自己紹介からじゃな」
……よかった。
どうやらダンジョンコアとは共通知識があって、お互いの個人に関する知識までは共通になっていないようだ。
ということは今の姿は、共通知識の中から選んだ美少女の姿ってことか。
……俺の好みにドストライクだったのは、偶然というわけだ。
「それじゃあ改めて、俺の名前は久保田太一。呼び名は、太一でいいよ。
17歳の、○○西△□高校に通う二年生だ」
「うむ。
ワシの名は、パルトナー。呼び名は、パルでよいぞ。
実質年齢は教えられぬが、ダンジョンコアとなってまだ数時間じゃ。
じゃから0歳というわけじゃな」
俺は、少し驚いた。
ダンジョンコアにはすでに、パルトナーという名前があったのか……。
こういう時、漫画やアニメなんかだと俺が名付けるはずなんだけど、現実は違うようだ。
でもまあ名前があるというのも、ある意味有難い。
こういう名付けって、名付ける者のセンスが問われるからな……。
「ところで太一」
「ん?」
「いくつか質問があるのじゃが、いいじゃろうか?」
「ああ、何でも聞いてくれ」
「まず、その背負っとるリュックの中には何が入っとるんじゃ?」
「ん? これ?」
そういえば、ずっと背負ったままだったな。
都市伝説を確かめようとしたら本当に異世界に来て、そしてすぐにダンジョンコアを手に入れて、今は創造したダンジョンの中にいる。
……考えてみれば、ここまでの出来事は濃かったが、そんなに時間は経ってなかったんだな。
俺は背負ったままのリュックを外すと、草の地面に置いて中身を見せた。
「入っているものはそうないよ。
……これは、携帯のバッテリーで、……これは、財布だ。中はそうないけど……。
……これは水筒。中身はお茶。……こっちは、来る途中のコンビニで買ったお菓子だ。食べる?」
「食べる!」
パルはそう言うと、俺の差し出した駄菓子を受け取って食べ始める。
「美味い!」
そう言って、本当に美味しそうに食べていた。
あとは、汗を拭くためのタオルとかが入っているくらいか……。
「……こんなものかな」
「フムフム。
じゃあ次じゃが、のう太一。お主はなぜ、ダンジョンを土地固定しなかったんじゃ?
土地固定しておれば、簡単にDPが稼げるというのに……」
「ん~、それは帰るのに困ると思ったからかな」
「帰るとは、太一の世界である日本にか?」
「ああ」
「……でも、後からでも変更できるんじゃから、土地固定でもよかったんじゃ?」
「確かに、後で変更可能ってあったけど、DPを使って、だったろ?
それに、必要なDPも表示されてなかったからね。
だから、土地固定にはしなかったんだよ」
まあ本当は、DPのことは後で気が付いたんだけど……。
とまあこんな感じでパルの質問に答えていくと、数えるほどの質問で気はすんだようだ。
「では次は、この草原だけしかないダンジョンの育て方じゃ!」
「ダンジョンの育て方? DPの稼ぎ方じゃなくて?」
「うむ。ダンジョンの育て方じゃ。
まずは太一に質問じゃ!」
「また質問か……、まあいいけど……」
「太一は、動物や魔物と戦うことはできるか?」
「無理!」
俺は、パルの質問に即答で返した。
今の俺が、野生の動物や異世界の魔物と戦えるかなんて、無理に決まっている。
というか、戦ったら俺が死んでしまう。
「……まあ、そうじゃろうな。
太一は、この世界の住人ではないからのう。
この世界の理からは、少し外れた位置にいるみたいじゃし……」
「この世界の理?」
「太一の認識で理解するなら、この世界にはレベルという概念が存在しとるんじゃ。
じゃから、ダンジョンを育てるとは……」
「ダンジョンのレベルを、上げるということか!」
「正解じゃ!」
何とこの世界に、レベルというものが存在するとは!
……いや待てよ。ならばどうして、ステータスが出なかったんだ?
いやいや待て待て……。さっきパルは何て言った?
俺はこの世界の理から、少し外れている……?
外れているということは、レベルの恩恵がないということか?
なんてこった……。
「……何じゃ急に落ち込みよって。
……話を続けるぞ?
では、ダンジョンのレベルを上げるにはどうしたらいいか。
太一、分かるか?」
「……ん? ん~、ダンジョン自体が、レベルを上げれるわけがないしな……。
……もしかして、パルがレベル上げをすればいいのか?」
「ハズレじゃ、太一。
そもそも、ダンジョンコアとダンジョンは別の存在。
人間でいえば、体と心臓といった関係か。
じゃからワシが、いくらレベルを上げてもダンジョンのレベルは上がらんのじゃよ」
「……ならどうすれば?」
「ゴーレムを使うんじゃ!」
「ゴーレム?」
ダンジョンのレベル上げにゴーレムを使う?
全く分からないな……。
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