魔女が営む雑貨屋さん【時計編】

みららぐ



夏休みが明けた9月上旬。


カレンダーではもう季節は秋だが、世間はまだまだ夏の暑さが残っている。

窓の外からジワジワとセミの鳴き声が聞こえてくる教室で、小学3年生の子供たちが、いま俺が出した練習問題を解いている。


「じゃあ…10分後に答えを───…」


しかし、そう言って自身の腕時計を覗き込んだ直後。

いつの間にか時計の針が止まってしまっていることに気が付き、俺は大きな衝撃を受けた。


…は!?

ついさっきまで動いてたのに!電池切れか!?


俺がそう思っていると、目の前にいた1人の生徒が俺に言う。


「ねーせんせー、ここわかんなーい!」

「え?ど、どれ?」


しかしそう言ってその生徒に近付くが、俺は腕時計が気になってそれどころじゃない。


「ねーせんせー、聞いてるの?」

「え?あ、ああごめん。聞いてるよ」


…電池はこの前替えたばっかなんだよな…。

俺はこの授業が終わったらちょうど昼休みだったので、この小学校の裏にある雑貨屋さんに行ってみることにした。

確かあそこ、時計の修理もしていたような……?



******



「すみませーん」


その後の昼休み。

早速貴重品を持って雑貨屋さんに出向いた俺は、そう言って店内を覗き込んだ。

実際に中に入ったのは初めてだが、店内はえらく冷たい空気だ。

冷房がしっかり効いている。


そのまま店内へと進むと、その途中で腕時計が売っている小さなコーナーを見つけた。

今日は買うつもりはないがなんとなく見ていると、その間に店の奥から70代くらいのおばあさんが出て来た。


「はいはい。何か探しものかい?」


そう言って俺の方に歩み寄って来るそのおばあさんに、俺は自身の腕時計をおばあさんに見せて言った。


「実は腕時計が壊れちゃって…あの、修理って受け付けてますか?」

「受け付けてるけど…電池切れじゃないのかい?」

「いえ、それはないと思います。電池はこの前替えたばかりなので」

「フーン…」


おばあさんはそう言うと、俺から腕時計を預かって、それをまじまじと見つめる。

そして、「ちょっと待ってな」と言って店の奥へと戻って行くから、俺はおばあさんに腕時計を預けたまま「ハイ」とだけ返事をした。

きっと、バックヤードで俺の腕時計を直してくれるんだろう。

そう思いながら気長に待っていようと再び腕時計のコーナーに目を戻すと、俺は少し気になる腕時計を見つけた。


「…時間を操れる…腕時計…?」






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