ファミレス談義男子
@ikasawa
小野航輝と牧口翔真
仕事を終え帰路に着く。
明日は休みだが何も予定が入っていない。
俺には趣味が無く、恋人も居ない。
歩き慣れた歩道、見慣れたコンビニ、今年で10年住み続けている家。
新しい事を始めようとするも、30歳の俺は少し安定や安心を求め始めていた。
コンビニで晩飯でも買って行こうかと考えていた時、スマホが震えた。
確認するとメッセージが一件、「ご飯行きませんか」というものだった。
行く、と即答の返事を送った。
時間は20時、家とは逆方向へ歩き始める。
スマホが震える。メッセージには集合場所としていつも行くファミレスの名前があった。
ファミレスに入ったのは20時半頃だった。
見渡すがまだ相手は居なかった。
先に入ってる、とメッセージを送り先に座る。
これから会う相手、牧口翔真は誘ってくれる癖にいつも遅れてくる。
天然というかマイペースというか、やれやれと思いながらも何かと面倒を見てしまう魅力がある。
「お待たせしました」
牧口が来て、向かい合わせの席に着く。
走ってくれたのか、肩で息をしていた。
「全然。俺も今来たとこ。なんも頼んでないよ」
「ドリンクバー付けてほしいです、喉からからで」
「オッケー」
席にあるタブレット端末でドリンクバーを2つ選択し、食べ物のメニュー欄を見る。
「まきしょー食べたいもの決まってる?」
おすすめ欄の中には目玉焼きが乗ったハンバーグや温泉卵が乗ったドリア、"月見を楽しもう!"の文字があった。
「決まってないので先どうぞ」
「わかった。…月見のフェアやってるよ、美味しそうじゃん」
「えー?でもそのメニューいつもありません?」
「そりゃあそうだけど…こういう季節感は乗った方がいいでしょ!」
俺は目玉焼きが二個乗ったハンバーグセットを頼んだ。
タブレットをまきしょーに渡す。
まきしょーというあだ名で呼ぶのは俺しか居ないと前に言っていたことをふと思い出す。
他の人はあだ名をつけられるとしても「マッキー」だったので新鮮でした、と言われた。
「頼みました」
「おっ、何にしたの?」
「オムライスです」
「普通じゃん」
「これも卵料理ですよ、お月見料理です」
「確かに!…確かに?」
話しているとドリンクバー用のグラスがテーブルに届いた為、1人ずつドリンクを取りに行った。
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