③BL習作 現代BL?

ゲリラ雷雨の影響で、今日の部活は中止になった。


陽向ひなたは教室の隅で一人、窓の外をぼんやりと見つめていた。


なんで部活ねえんだよ。あいつに会えないじゃん。


他のクラスメイトたちは、賑やかに帰り支度をしている。


けれど陽向は、みんなよりも少し遅れて帰るつもりだった。なぜならどうしても彼と話がしたかったからだ。


だからこうして、窓から彼の姿を探している。

彼の姿が見えたら、猛ダッシュするつもりだった。

陸上部の俊足をなめんなよ。


「おい、陽向。」

陽向の胸が激しく鼓動を打つ。

なぜここに?


声の主は桐谷きりたに

桐谷は、部活の仲間にはいつも、どこか距離を置いたような態度を取るのに、陽向にだけは違う表情を見せる。


「帰らないの?」

陽向は小さく息をついてからうなずいた。

「うん、ちょ、ちょっとね。」


「何?考え事?」桐谷は少し眉をひそめた。「悩みでもあるの?」


陽向は桐谷のまっすぐな視線を避けるようにうつむいた。


妄想の中では、何度も告げた言葉が喉の奥で行ったり来たりしている。


桐谷と話す度に、自分の気持ちがどんどん強くなっていくことに陽向はとっくに気がついていた。


その刹那、桐谷が陽向の耳元でささやいた。

「お前、俺に何か言いたいことがあるんだろ?」


「それは…」陽向は息を飲んだ。

「言えよ。聞いてやるよ。もう教室には誰もいないんだぜ。」

桐谷はニヤリと笑った。


誰もいない教室で2人が向き合う。

陽向は顔を赤らめた。


どのくらいの沈黙の時間が流れただろうか。

陽向はようやく覚悟を決めて言った。


「桐谷、俺…君が好きなんだ。」


桐谷は何も言わず、しばらく黙っていたが、陽向の顔をじっと見つめた。


陽向はその視線に耐えきれず、視線をそらそうとしたが、桐谷が突然、手を伸ばしてその頬を優しく引き寄せた。


「俺もだよ。」

その言葉に、陽向は一瞬、日本語がわからなくなった。


それを見ていた桐谷が、もう一度、言った。今度は陽向の耳元で。俺もだよ。




桐谷が僕のことを好きだなんて、夢のようだ。でも、本当に?

陽向は桐谷の目を見つめた。その瞳は嘘をついていなかった。


桐谷はまた、陽向の耳元で小さく囁いた。


「だから、これから俺たちがどうしていくか、今から一緒に考えようぜ。」


陽向はもう言葉を失った。桐谷と一緒にいるだけで、天に召されてしまいそうだ。


雨音が激しく響く暗い教室の中で、2人の影が重なった。


二人の間に新たな"何か"が芽生えた瞬間を知っているのは、ゲリラ豪雨だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る