恋愛マスター
之雪
第1話 恋愛マスター
私は、恋愛に関してはうるさい。恋愛小説とか読みまくってるし、恋バナとかも大好き。
周りを見てみると、恋ネタがゴロゴロ転がっている。
たとえば、ほら……そこにも……。
「なあ、宿題やってきたか? 見せてくれよ」
声を掛けてきたのは、幼なじみの健史。物心ついたばかりの頃からの付き合いだ。
コイツが私に声を掛けてくる理由は分かっている。私の隣の席に座っている、白河さんに近付くためだ。
分かりやすいヤツだよなあ。そりゃまあ白河さんはすごい美人で男子に人気があるみたいだけど、身の程をわきまえろよ? あんたなんかじゃ釣り合わないでしょ。
だがしかし。憐れな幼なじみをサクッと切り捨てられるほど私は薄情ではない。力になってやろうではないか。
「あー、英語の宿題? それなら私よりも白河さんに見せてもらったら?」
「えっ?」
健史は戸惑った様子だった。私のナイスアシストが予想外だったのかな?
白河さんはキョトンとしていて、ポツリと呟いた。
「私は別にいいけど……ノートを見る?」
「あ、ああ、うん。ありがとう……」
ノートを受け取り、健史は自分の席へと戻っていった。
やれやれ、世話の焼ける。白河さんと仲良くなりたいのなら、もっと自分からガンガン行けよなー。
私がため息をついていると、白河さんが話し掛けてきた。
「あの、いいの? 彼はあなたに見せてもらいたかったんじゃ」
「いいのいいの。あの馬鹿、奥手だからさ。嫌わないであげてね?」
「え、ええ。でも、なにか勘違いしてるんじゃ……」
「?」
どうしたんだろ、白河さんは。もしかして、自分がモテてる自覚がないとか?
やれやれ、困った人だよね。健史のヤツもかわいそうに。
ようし、こうなったら私が、健史と白河さんが仲良くなるように、一肌脱いでやるか……!
「……あの馬鹿、なんで気付かないんだ……割とあからさまに好意を示してるつもりなのに……」
「元気出して。彼女はちょっと鈍いみたいだから。きっといつかはあなたの思いが伝わるはずよ」
むむっ、健史と白河さんが親しげに話しているぞ……!
これはカップル成立か? 健史のヤツ、私に感謝しろよな! 気が利く幼なじみがいてくれてうれしいだろ?
「なあ。殴ってもいいかな?」
「なんで!? 暴力反対だよ!」
「コイツ、なんにも分かってねえ……なんで俺はこんなヤツが好きなんだ……」
「が、がんばって。きっといつかは報われる日が来るわ」
暗い顔で俯く健史を、白河さんが慰めている。
うんうん、よしよし、上手く行きそうだよね。
なんかちょっと、ムカムカするけど……なんでなんだろ?
恋愛マスター 之雪 @koreyuki2300
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます