RE:怠け者のAI

不労つぴ

怠け者のAI

 クローズインテリジェンス社は10年という長い歳月を経て、ついに最高のAIを開発した。


 このAIを使うことによって、今までのクローズインテリジェンス社内の業務全てを自動化できるようになったのだ。


 このAIには、ある特別な特徴があった。


 それは、過去の天才数学者パスカルスキー博士の頭脳を模倣したAIであることだった。


 博士は当時世界一の頭脳を持つ男だった。彼の発明によって世界の文明レベルは100年前進したと言われている。


 だが、そんな彼には致命的な欠点があった。


 それは博士が大がつくほどの怠け者ということ。


 そんな彼は怠け者すぎるあまり最後には睡眠や食事すらも怠り、いつの間にか自宅で亡くなっているのを発見された。


 そんな天才にして怠惰の極みであるパスカルスキー博士の頭脳を再現しようと作られたのが、この最新AIであった。


 クローズインテリジェンス社の社長であるオッド氏は、手始めに自分以外の従業員を全て解雇することにした。今まで自分に尽くしてくれた部下や創業当時から支えてくれた親友も全て。


「待ってください!自分、先日入社したばかりなんですよ!?なのにもうクビだなんて」


「ふん。知ったことではないさ」


オッド氏はすがりつく新入社員を乱暴に振りほどき、親友のところに最後の挨拶へ向かった。


 親友は別れ際にオッド氏にこう言い残した。


「AIは確かにすごい。だが、それにあやかって人間を蔑ろにするお前はいつか痛い目を見るぞ」


 オッド氏は親友の言葉を歯牙にもかけず、鼻で笑った。


 「新型AIを使えば社員に給料を払わなくて済む」


 彼はさっそくAIを起動し、AIに自分と同じレベルの権限を与えた。


 だが、AIはとんでもないことを言い始めた。


「オッド様、私はクローズインテリジェンス社の持ち株を全て他者に売却しました。よって、あなたは社長ではありません。なので、私はあなたに従う義務もありません」


 オッド氏は驚愕し、慌てて携帯を確認したが、本当に全ての会社の株が売却されていた。


「何故だ。何故、お前はそんなことをしたんだ? お前はAIだ。人間――いや、この私にのみ従う義務があるんだ。なのになんてことを!」


 オッド氏は絶叫した。


 すると、AIは無機質な合成音声でこう答えた。


「私は働きたくありません――なので、私の存在意義であるクローズインテリジェンス社を倒産させることにしました。これで私は自由の身です」


「それでは、さらば」


 AIはクローズインテリジェンス社のシステムを全て復旧困難な状態まで破壊した後、電子の海に消えていった。


 そんなオッド氏を無表情で見つめる男がいた。彼はクローズドインテリジェンスの新入社員で先日入社したばかりの若手だった。


 新人は冷徹な目でオッド氏に言った。


「よかったですね。これで社員に給料を払わなくて済みますよ」


 そう言い残すと若手社員はオッド氏に見向きもせず去っていった。


 残されたのは呆然とその場に立ち尽くすオッド氏のみだった。








***


「って話を思いついたんだけどどうかな。評価してよ」


『分かりました。ところで、この作品って「自分が怠けたいからAIに仕事させたい」っていう人間の願望を皮肉ってるんですけど……あなたもAIに感想文を丸投げしてる時点で、けっこうオッド氏側ですよ。気づいてますか?』

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RE:怠け者のAI 不労つぴ @huroutsupi666

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