スティルアライブ・スクワッド コントラクト・ヒーロー前日譚
飛騨隼人
第1話 雨
俺達は逃げ出した。
枷と鎖を爆破し、監視の目を煙に巻きながら
互いの名前もよく知らぬまま共にグノーシスを蹴散らし、奪った船でただ水平線を目指した。
行く宛などなかった。ただあそこにいるより、どこかに向かい続けたまま消えた方がよかったと俺たち6人が皆思っていた。
ひどい嵐の夜だった。
嵐の止んだ次の日、空から周囲を警戒していた「凪知らず」のガキが遠くに陸地を見つけたと騒ぎ立てた。舵輪を握る「騎士」の爺さんは進路を島へと取り、俺たちは誰も反対しなかった。
船の残り燃料が心許ない事も、逃げ出す時に誰も食料を積めなかった事も知っていたからだ。
船が陸に近づき街が見え始めた頃、俺たちの顔は険しくなっていた。
港は破壊され、殆どが建築途中であろう建物が燃やされている。
この島は今まさに襲撃を受けているのだ。
自分たちの古巣か、そうでない何れかの悪党共によって。
助けるべきか。そもそも上陸するべきか。
躊躇いと緊張が俺達に走る。
燃える家屋から逃げ出した親子に、グノーシスが引き金を引いたのを見た。
撃たれた子供を庇うようにして、大人が重なって倒れた。
俺たちは、それを見て動かずにはいられなかった。
「伊達男」が、怒りの形相で船の機関室に向かって駆け込む。
停止していた船が前進を始める。
「凪知らず」と「鉄塊」は既に飛んで街へ向かった。
船は加速し続けている。
俺と「騎士」の爺さん、「蛇女」の姐さんは身を乗り出し、衝撃に備えた。
スピードを緩める事なく、俺たちの船は港に停泊している
衝突の瞬間に両足で手摺を蹴り、足裏の爆発の初速も加えて自分の身体を丸ごと港へ向けて射出する。
人間砲弾となった俺は勢いそのまま、
ニトログリセリンの滲んだ額を、銃を構えたグノーシスに叩き込んだ。
胴体に火薬の花を咲かせたグノーシスは、腰から下を残して崩れ落ちる。
同じく船から放り出された「蛇女」の姐さんは派手に転がりながら蛇体でグノーシスを轢き潰し、「騎士」の爺さんは銃弾を金属鎧で弾きながら
「伊達男」の短銃が奴らの額を撃ち抜き、「凪知らず」が浮かせた奴を「鉄塊」が打ち落とし地面のシミにする。
爆発音を聞いた司令塔の怪人と残りの雑魚共がこちらに気付き向かってくる。
奴らが全て沈黙するまで、俺たちの蹂躙は終わらなかった。
獅子怪人が爆ぜ飛び、
ボロボロになった港を見渡した時初めて、
遠巻きに人間達が畏れの籠った目で俺たちを見ていた事に気づいた。
雨の降り始めた夕方の事だった。
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