火傷花 (究極のマゾヒストが思う最高にサディストで優しい彼について)
ももは
火傷花 (究極のマゾヒストが最高のサディズムに対して賭ける恋)
俺はもう行くよ。
さんざん、、、、
迷惑かけただろ??
わたしはかんがえる。
行かないで、
と言ったら皆が困るのだろう。
彼の。
わたしへの
目に見えないジェラシー。
わたしへの
気づかせることもない干渉、
辛いか?とセミが訊いていた。
おおい被さるような声で
追い詰めるような鳴声で
訊いていた。
鬱蒼と茂る
深緑の憂鬱。
みつめる事など出来ないほどに
まばゆくて
めくるめく夏陽が割れて弾き返る
鋭いひかりの破片!!
のような貴方を
私は見ないふりをした。
受け止めきれないほど熱い愛情だったのに
全てを凌駕するほどの深い想いだったのに、
不適切なものをはねのけるように
黙ってふり向かずに逃げた。
ふつうが良かったんだろ??
俺はふつうにはなれないんだよ。
逃げても彼は追ってきた。
好きだった。。。
好きだったのかも知れない。
毛嫌いするほど好きだった。
あんなやつ!
と、
わたしは女友達に言った。
もう何処かへ行ってしまえばいいのに。
こんな夏なんて。
でもね、、
行くときが来たんだよ、
俺は旅人だからさ。
彼は、神妙に言う。
それは台風続きの拷雨のあとの
9月の終わりに、
タイフーンとは違う
しとやかな雨の降った夕暮れだった。
もう、行かなくちゃな。
行かないで。。。
わたしは深い沈黙が、世界でたった一度だけ
ため息を吐いたような声を出した。
聴こえない!
彼は、言った。
そうだよね?わたしはひどい事したんだもの。
貴方の強さも、優しさも、激しさも、深さも、
嫉妬も、詮索も、束縛も、当罰も、
全てすり抜けて逃げようとしたんだもの。
彼はうつむき、前髪を落とす。
聴こえないし、聴きたくない!
そこには、、
拒み続けられたあとの
疲れの翳りが見てとれた。
ごめんね.
指にふれると軽く灼けた匂いがした。
寂しくなるわ。貴方が行ってしまうと。
海は冷たくなり、
山にはこれから枯れゆく葉が音をたてる。
動物たちは無くなる食物を溜め込まなくてはと慌ただしくなって
台風の神々は引っ越しをしようとくわだてをする。
ホントは貴方を愛してたの。
わたしは命乞いをするように言ってみる。
貴方の思いが、
辛くて、重くて、乱暴過ぎて、
面倒くさくて、疲れ切って、
説明も言い訳も何もしなかったけれど、
まばゆいほどの
激しい貴方を愛してた。
もう、本当に去るよ。
君の気持ちはわかってたよ。
又逢えるよ、
いつかね。
わたしは、、、、、!!
懐かしくて懐かしくて愛おしくて、
辛くて切なくて寂しくて
狂おしいほど恋しくて、
去られれば
喪失感で気が狂ってしまうはずの
彼 を
小さく 行かないで、 と
囁くだけで行かせてしまう。
灼熱の夏を、
過酷な振る舞いを、
煉獄のおとこを、
夏 という名前の 彼を。
行かないでというささやきの5文字で
行かせてしまう。
きっと、、、
気づかず押し入られてしまっているに決まっている 秋 に
はっ、として
言葉も無く
吹かれるのだろう。
遺失感しか持たない穴だらけの私を、
木枯らしの始まりの魔女が
カラカラと笑って
通り抜けていくだけの日が
きっと、、、
すぐに来てしまうのだろう。。。
老いさらばえて行くわたしに
あの日々は眩しすぎたと語る日が。
きっと、すぐにやって来るのだ。
貴方を
繋ぎ止め、抱きしめる力も残されていないわたしに。、、、、
fin
火傷花 (究極のマゾヒストが思う最高にサディストで優しい彼について) ももは @momoha821
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