🌕第3首 あしびきの🌕

 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の

 ながながし夜を ひとりかも寝む(柿本人麻呂)


 山の夜は、静かすぎて胸に響く。

 風が木々を渡り、遠くで山鳥の声がする。

 長く垂れた尾のように、夜は終わりを見せずに続いていく。


 灯りを消せば、ただ闇と自分だけ。

 声をかけたい相手は、ここにはいない。

 ほんの少し袖が触れただけのあの日を思い出して、眠れずにいる。


「会いたい」と言えればよかった。

 けれど言えないまま、夜はますます長くなる。

 山鳥がつがいを離して眠るように、今夜もひとり、夢の中でしか逢えない。

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