第2話 女装男子、初の友達ができる。
......凄い。
色々なメイクが揃っている。
メイク道具もあるし、化粧水とかの基本的な物も沢山置いてある。
「良いでしょ、このお店。」
「楽園みたい......‼︎」
「だよね〜♪」
えーっと、防水のメイクは......。
......おお、これ良いかも。
しかも、200ポイント、って結構安い。
この世界は、お金の単位が「ポイント」らしい。
てっきり、アメリカとかの「ドル」かと思っていた。
ポイントは給料と悪者の退治によって貯まる。
給料は人間界と同じく、月1で能力や地位、手柄などを含めて
異世界共通のポイントカードに振り込まれる。
悪者の退治、というのは手に負えない犯罪者......つまり、指名手配犯みたいな人を
退治したら報酬金が手に入る、ということだ。
まあ、メイドには関係のない話だ。
化粧水とメイク用の洗顔フォーム、ファンデーション、チークをカゴに入れ、レジに向かう。
「......あ。」
パック、忘れてた。
お肌の手入れは、やはり欠かせない。
毎日使うから結構なポイントがいるけど、仕方がない。
メイドは、風貌も大事だと思うし。
「......こんにちは。」
「こ、こんにちは。」
話しかけてきたのは、多分お婆さん。
深くフードを被っていて、顔が見えない。
「君、良い力を持っているね。」
「良い、力......?」
「なんだろうねえ......よくはわからないけれど、戦闘労力が高そうねえ。」
「いや、トレーニングとか何もしていないので、そんなことは......。」
「それでも、誰かを守るために少しは鍛えておいた方がいいわよ。」
もしかしてこのお婆さん、僕が女じゃないってこと、わかってる......?
「あの......‼︎」
周りには人がいるから、迂闊には言えない、けど......。
「私は人の秘密は守るわよ。」
「......っ‼︎」
ひとまず、安心した。
ここでバラされたら、メイドを解雇どころか、人生が終わってしまう。
「これ、私の占いの店。困ったことがあればいつでもきなさい。
あと......。」
まだ、何かある......?
「君の赤い瞳は、いずれ、君の助けになるだろう。」
......どういうこと?
お婆さんの背中が小さくなっていく。
赤い瞳は、異常なの......?
この街にも何人か見かけたような気がする......けど。
確かに、赤い瞳の人は少ない。
みんな水色とか、黄緑色とか、茶色とか。
どうしてだろう。
学校はすっ飛ばして大人になっているから、何もわからない。
でも、今気にすることではないと思う。
「......買い物しないと。」
アリアも楽しんでると思うけど、流石に時間がかかりすぎている気がする。
迷惑は、かけないようにしないと。
「......あ、リオン‼︎」
「ごめんね、遅くなっちゃって。」
「大丈夫だよ。 目当てのものは買えた?」
「もう、バッチリ。」
「良かった〜。 じゃ、次はこのお店行って良い?」
少し歩いて路地裏に入った所だった。
......え。
なんか……ヤバそうなお店。
明らかに他の雰囲気と違うし......結構古そうだ。
「......あれ。」
案外、普通のお店だった。
アクセサリー系で、シンプルなものが多めだった。
「......ねえ、リオン。」
「どうかした?」
「これ、お揃いで買わない?」
アリアが手に取ったのは、ペンダントだった。
ハート型で、とてもキラキラしていた。
1つは赤色、もう1つは青色。
......きっと僕が赤色だ。
「これね、裏にイニシャルを入れられるんだ〜♪」
「そうなんだ。」
ここで、会話が途切れてしまう。
あ、繋げにくい反応しちゃったか。
18歳だけど知能は10歳だから、この辺をしっかりカバーしないといけない。
......なにか、何か話さないと。
「......買っていい?」
「え、あ、もちろん!!」
「......お揃いで?」
「アリアが良ければ、それで。」
1000ポイントずつ払って、店の外へ出る。
早速、つけようかな、ペンダント。
掘りたての「R」の文字が、普通に気に入った。
「......ねえ、リオン。
......私と友達になってくれる?」
アリアが、恐る恐る聞いてくる。
......友達。
人間界で、避けてきた存在。
どうせいなくなってしまうのなら、大切な人はお父さんとお母さんだけで良い。
そう思っていた日々だった。
......けど。
もう、僕は、幸せな日々を送れる。
みんなが言う「普通」が、この命がある限りずっと続く。
「良いよ。 友達になろう。」
「......っ‼︎ ありがとう‼︎」
「......このペンダントは、友情の証、ってことで。」
自分でそう言ってから、僕は自分の言葉に納得する。
何も考えずに、するっ、とでた言葉。
......友情の証。
僕はこのペンダントを、生涯大切にしよう。
「じゃ、次はどこ行く?
結構日が暮れてきたけど。」
「......普通に日用品を買わないといけない。」
「え⁉︎ 急がないと‼︎」
2人で一緒に、裏道を走り出す。
左に顔を向けると、パチッ、っと目線があった。
......楽しい。
お互いの笑い声が、暖かい夕日の中へ消えていった。
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