第一話 追憶①

(パチパチと、焚火にくべられた枝木が割れる音がする)


──ついてこい、お前は今から私の子だ。


……お母さん? そういう意味の子ではない。


弟子になれという意味だよ。


何を教えてくれるのか?って、ん~、そうだなぁ……。


まぁ、まずはお前の現状についてからだな。


どうだ? 少年。


少年はどこまで覚えてる?



……ふんふん、孤児院で暮らしていて、……シスターと神父様、孤児の仲間。


日が落ちて、藁を敷いた寝床で凍えぬように寄り集まって眠った……か。



皆はどこにいるか、だって?


さあなぁ、生憎と私はそのお友達らの顔をしらんからな。



ははっ、そう分かりやすく落ち込むな。


お前がきちんと思い出せるように、私も手伝ってやる。


これに……、見覚えはあるかな?


……そう、人の頭の骨、頭蓋骨だ。

 

いま私たちがいるこの廃墟に、一、二、三、四、五、六、七……


あら不思議だ、少年のお友達の数と同じだね。



……そろそろ、思い出せたかな?


……そうか、顔も知らぬ大人たちが、突然孤児院に押し入ってきたのか。


そうだ、皆殺された……、


なのになんで、お前だけ生きているんだろうな?


(音が幾重にも重なって聞こえる。吐き気と頭痛、息が苦しくて仕方がない)


おっと、追い詰めすぎたかな? おい、少年? おい、おい!


(周りの音が遠ざかっていく、地面の感触が分からない。)

 

(暖かい何かに体を抱き留められた。落ち着いた心音と、息の音がしっかりと聞こえる)


…………そう、そうだ、ゆっくりと息を吸え、少年。


……そう、ゆっくりだ。ゆっくりと……。


(しばらく続いたささやき、ふわりと体を包んでいた熱が離れた)


悪いね、イジメるつもりはなかったが、


どうしても思い出して貰わないと行けなかったんだ。


少年が一度死に、そして生き返ったことを。


なんで生き返ったのか? 


さあ、それは私にも分からない。


ただ往々にして、黄泉がえりを成したものには共通点がある。


死の瀬戸際に深い怒りや嘆きなど、


身を灼くほどの悪感情を抱いていたということだ。


少年にも覚えがあるだろう?



魔法も祈りも化学も、人を生き返らせることは適わないが、神ならそれができる。


私たちは選ばれたんだよ。


私たちは甦らされた。


無念をはらすための、


特別な力まで与えられて。



私が教えられるのは、その力の使い方だ。


。……安心しろ。


お前の家族を殺した蛆共も、


……きっと殺せる。

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