3日目
今日もパソコンの前に陣取る。
が、今日はなぜだか書く気になれなかった。
画面を前にして、全く手が動かない。
やらなければ、進まない。
やらなければ、ならない。
必死に動かそうとする手は震えている。
徐ろに目の前にあったコップを倒し、机を叩く。
叩いた振動で、机から転がり落ちたコップの割れる音が暗い部屋に響いた。
その音で我に返る。
同時に、意味はないと分かっているのに物に当たってしまった喪失感に襲われる。
慰めてくれる人などいない。
ゆっくりと立ち上がり、ガラスの破片を拾い集める。
今の自分にそっくりなそれを、鋭利で、でも脆いそれを壊さないように。
拾った欠片をすべてビニール袋に入れる。
――ッ。
嫌な感触に、思わず顔を歪める。
袋を突き破った破片が肌を切り裂いていた。
見ると、腕が真紅に濡れている。
遅れて鈍い痛みがやってくる。
鼓動に合わせて面積が拡大する。
それは、否が応でも自分の存在があることをそこに主張していた。
痛覚によって自身を初めて知覚する。
自傷によるアイデンティティの確立。
リストカットをする人たちの気持ちが少し分かったような気がした。
ビニール袋を投げ捨て、また
どうせこの傷も明日には治っているだろう。
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