第9話 水の国の双子の話
ある小さな島国、そこによく似た仲のいい双子がいた。名はマレインとフマル。光り輝く金髪を持ち、美しいエメラルドグリーンの目を持っていた。四肢は細く、軽く握れば折れそうなほどだった。
両親は元冒険家だった。世界を旅し、知り、集めた。そんな話を聞くのがとても好きだった。いずれ大きくなったら世界のすべてを知りたいと双子二人して同じ夢を持った。
ある日、水に囲まれた小さな島国に魔王軍の残党が攻めてきた。
魔王というのは数千年前に英傑たちによって倒されたらしいが残った魔王軍の者は今もなお世界のどこかで暗躍している。
――――そうして彼らは親を失った。
「どうして親が先に死んじゃうんだろうね。フマル。」
「本当、ひどい話だよね…マレイン。」
彼らは復讐すると決めた。だが彼らには魔王軍を圧倒できるほどの力などなかった。
「旅に出ようか。もううじうじしていられない。」
「そうだね。探さないとね。」
「「――世界は残酷なんだから」」
その後「あぁ最悪だ」と呟き双子は旅に出た。
北の大帝国に行き非人道的な所業を目の当たりにしたり、魔王城跡で作業服を着た人たちを眺めたり、ゴールドテールと言われる種族と対峙してみたり、海を越え世界で二番目に長い歴史を持つオータナアリアに行ってみたり。そうして双子は夢の大半を叶えた。
「12の英傑。面白い人たちだ。」
「一人は生きてること確実だね。」
二人の体は成長し、身長は180cmに達しようとしていた。
「あぁ、もう一人、武闘家?とかいうやつが壊れずにまだ生きていればいいんだがな。」
「どうだろうね、3050年前だよ?精神病んでないといいね。」
二人はオータナアリアにいた情報屋からもらった紙の写しを見ながら言う。
「昔はこんなにすごい人がいたんだね」
「かわいい子とかいたのか?」
「…もうマレインはいつもそうだ。女性しか見てないんだね」
二人は歩く、島国の第二のシンボル。サウラの時計台に向けて。
その双子は身長だけでなく精神的なものも身体的なものも成長していた。
「「迎えに来たよ。」」
双子はとある少女と対面し、言う。
「―さっさとこの国に蔓延る害虫どもを」
「―ぶっ壊すとしようか」
かくして双子は暴れ始める。美しさと残酷さが兼ね備えられた小さな島国で一人の少女と復讐のために。
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