第7話 国境を超えちゃいます!
身支度を終え、三人は近くの飲食店へと足を運んでいた。
「なんでも頼んでいいぞ」
「え、何にしようー朝から脂っこいもの食べちゃおうかなぁ」
「ぼ、僕はこのピ、ピザでいいかな…小さいの…」
そうして三人は注文を済ませ、テーブルには大きなステーキと唐揚げ定食とSサイズのピザが並べられていた。
「しゅ、種類豊富…」
「だな、俺もビックリだ。」
「朝から重いもの…これもイイっ!」
ミヤが一人で何か言ってるが二人は聞かないことにしておいた。
「あ、飯食い終わったらここ出るぞ。」
「え?お店を?」
「違う、国だ。」
「え?オータナアリアを?」
「あぁ、島国アクアマールに行く」
「私、初めて国境超えるんだけどぉ!」
唾を飛ばしながらミヤが興奮しだす。
「島国…!ってことは船乗るのよね!?」
「あぁ、船酔いとか大丈夫か?」
「ぼ、僕は大丈夫だよ…」
そうしてシルタとルークの視線は自然とミヤに向かう。
「私?多分大丈夫!乗ったことないけど!」
その自信はどこから来るのか。こういうやつこそ船酔いするのだ。事実、作者がそうである。
「じゃあさっさと食べちゃいましょ!」
そういうとミヤとルークはペロリと朝食べるには重すぎる料理を平らげた。
「は、早くない?2人とも…」
「普通だろ」
「普通でしょ」
「ぼ、僕が遅すぎるだけだった!?」
そうしてゆっくりと食べること10分、ようやくテーブルの上の料理はなくなった。
「忘れ物ないか?」
「なーーい」
「村でもお、同じようなことしたね…」
そうしてちょうど良く港行きの馬車があったため乗っていくことにした。
「そういえばアクアマールってどんなことろなの?」
馬車の中でミヤが尋ねた。
「簡単に言や小さな島国だ。」
「?なんでわざわざそこを通るの?小さいんでしょ?」
「あぁそうだな、地理的には小さいが大きな役割を果たす国なんだ。あそこは世界最大の貿易国でな、海に面してる国あらゆるところに船がでてる。」
オータナアリアも海に面しているため船一本で行くことができるのだ。
「それを使って禁書の眠る森があるところまで行くのね。そういえばそれってどの国なの?」
「フラーシア大陸。北の大帝国の少し南東、テッラー独立国。そこの最東端に位置している。」
「へぇ〜なんか目印とか有名なものとかないの?」
「テッラーには特にないな。近くだったら……あまりにも有名すぎるものがあるが…」
「え?なになに、私でも知ってるやつ?」
「ぼ、僕も気になってきた」
「………魔王城、だ。」
あまり思い出したくないのか苦し紛れに出た声。されど二人を驚かせるのには十分すぎた。
「「えええぇぇぇ!!そんなところにあったのぉー!」」
その瞬間、ドンと板を叩くような音が響く。
「あんたらうるさいよ!馬が驚いて暴れだしたらどうしてくれんだい!」
「「すいませーん!!」」
「それでそれで魔王城って――」
すると段々と肌に纏わりつくような、湿気と塩分を含んだ風が感じられるようになった。
「…そろそろ海だな」
前方を確認すると視界一面澄んだ青。
穏やかに波打ち、砂浜の方には人が群がっている。そこから視線を右に移すとコンクリートで出来た頑丈そうな建物と大きな船を視認することが出来た。
「わあぁぁぁぁー」
圧巻。初めて海を見るミヤからは声と言えない声が発せられていた。
「あれ!あれに乗ってくのよね!?」
「厳密に言やあの船じゃねぇが、まあ、あんな感じのやつにな。」
「わはあぁぁぁぁー!楽しみー!いつ?いつ乗るの!?」
「次港に入ってくる船だな。」
ルークは地図とは違う紙を広げる。
「10時発。これだ。」
そうして三人は船着場へと足を運ぶ。途中
それからほどなく目的の船がそこに着いた。
「どこを見ても海ぃー!陸が見えない!」
帆船の上ではしゃぎ回るミヤ、落ちそうなほど身を乗り出し、もと来た方角を見ているが陸地は一切見えない。
「ミヤ、ここらへんから海は一気に荒れるぞ。一応覚悟はしておけ」
「…?覚悟?」
大人しかった海は表情を一気に変える。波は荒れ、高さ2mにも達しそうな波が船に押し寄せる。
それの影響で船はほぼ斜めに傾き再度平坦へと戻るかと思いきやそのままの勢いで下方向へと船体を傾けた。
「きゃー!なにこれなにこれ!キモい!気持ち悪いぃー!」
腹と口を押さえなんとか耐えているが今にもその防衛線は崩壊しそうになっている。
「だから言ったろ覚悟しとけって」
「こんなになるとは思ってなかったのぉー!…なんか、気持ち悪いの治す魔法…なんかないの」
「すまんがない」
「もー!なんなの――うっ!」
文句を言おうと開けた口から何かが吐かれそうになる。それを必死に抑えるがミヤの胃、喉は言うことを聞かない。
ミヤは駆け足で船体から身を乗り出すと口から虹色に光る物体を吐き散らかした。
「うげぇー!」
そうして気持ち悪い気分のまま、ろくに風景も楽しめないまま国境を超えた。
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