6話 精霊の契約と姫の不安

 港町から戻った夜。

 アミーナは、王宮の自室で静かに考え込んでいた。

 精霊アリーとの時間が

 いつか終わってしまうかもしれない

 ――そんな予感が胸を締めつける。



 アミーナは独り言をいいます。

「私には……何もできない。

 どうすればいいか、わからない……」

 姫の声は、まるで小さなともしびのように

 弱々しかった



「姫様、無力であることは罪ではありません。

 誠実であることが、力です」

 精霊の言葉は、静かに姫の心に届きます。



 だがアミーナは尋ねる。

「でも……アリー、いなくなってしまうの?」

「契約の期限は近づいております。

 あと、数週間ほどです」

 姫の瞳が、ふるえる。



「……ずずーん」

「姫様、擬音で落ち込まないでください」

 別れの予感は、まだ遠い。でも、確かにそこにあった。





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