16 クソみたいな日常

(圭人) 何してる? 返事くらいしてくれ。

(圭人) また無視するのかよ。


「くっそ、健斗と連絡する時はすぐ返事したくせに……。しかとかよ」


 持っていたスマホをベッドに投げてパソコンの前に座った。

 停学処分を受けた俺はほぼ毎日ライブ配信をしている。

 特にやることもないし、こっちの方が学校に行くことより楽しいし、何よりもお金を稼ぐことができるからさ。だけど、ずっとイライラが止まらない。下谷にちくったやつが誰なのか、それが気になって居ても立っても居られない。優にあんなことができるわけないからきっと助っ人がいたはずだ。


 あのクズを見つけ出さないとな。


 その時、あやからラインが来た。

 下谷にちくった人は小柳にいなだと、あやはそう思っているみたいだ。そして優のことを一年生の時からずっと好きだったって。確かにそうだな、俺たち以外友達いないやつだから、うちのクラスにあまり来ない長谷川より小柳の方がもっと怪しい。


 とはいえ、長谷川雪乃か……。

 どっかで聞いたことありそうな名前だけど、思い出せないな。


「まあ、今夜あやが来るって言ったからその前まで適当にパンでも食べておこう」


 そして居間に出た時、出かける準備を終わらせた健斗と目が合った。


「バスケか」

「そう」

「毎日頑張ってるな」

「パソコンの前で時間を捨てることよりマシだから、お前も少しは将来のことを考えたらどうだ? お父さんが心配している」

「はあ?」


 停学処分を受けてからこの家にいるのが嫌になる。

 お父さんとお母さんに無視されるのは仕方がないことだけど、健斗にまで見下されるのはマジで気持ち悪い。自分は名誉を手に入れたから、俺よりも自分の方がもっとすごいってことを知っているから、あんな風に言っているんだろうな。


 お金なら俺も稼いでいる。俺もネットでは有名人だぞ。

 お前だけじゃない。健斗。


「そういえば健斗。彼女と別れたのか?」

「お前と関係ないことだから気にするな。そしてユッキの話をもう一度口にしたら、ぶん殴るぞ」

「チッ、分かったよ。失せろ」


 まったく、気持ち悪いやつだ。

 こんな家にいたくないのに、卒業するまで仕方がないから。

 そのまま適当にパンを食べた。


 ……


「け、圭人!」


 そして約束の時間、あやがうちに着いた。

 マジで単純な女だな、あやは……。

 ちょっと優しくしてあげるとすぐ頬を染めるなんて。でも、今はあや以外頼れる人いないから、この件が終わるまでちゃんと作り笑いをしないといけない。まだ利用する価値がある。


「写真は見たよ。ちくったやつは小柳にいなか」

「うん! 絶対、小柳にいなだよ。あの人以外そんなことができる人いないと思う。優の友達は私たちだけだから」

「そっか。じゃあ、先にお風呂入れ。俺はパンを食べた後、入ったからさ」

「うん! や、やるの……? 今から……」

「やりたくないなら入らなくてもいい」

「行ってくるから! ちょっと待ってて! 圭人!」

「うん」


 お父さんに殴られたところがまだ痛いけど、それでもセックスは普通にできるから問題なはい。てか、あいつらのせいで停学処分を受けるなんて、マジで面白いな。クズども……。


 でもさ、俺は停学されただけで完全に諦めたわけじゃない。

 ちゃんとあのクズどもに復讐をしないと……。

 そのままあやが出るまでベッドで小柳の写真を見ていた。


「やっぱり、圭人の風呂は広くていいね。今日も誰もいないの?」

「そうだよ」


 あやとやるのはそこまで好きじゃないけど、一応ストレス発散に効果的だからさ。

 すぐベッドに倒してあやの首筋を噛んだ。

 あやはこういうの大好きだよな、どこが弱いのかちゃんと覚えておいた。人を利用する時はちゃんと相手の好みを覚えておかないといけない。ちょっと優しくしてあげただけで、すぐこんな風になるからさ。ちょろいもんだ。


 そして床には使用済みのゴムが三つ落ちていた。あっという間だったな。


「———っ♡!!!」

「ご褒美はこれでいいか?」

「うん……♡」


 てか、俺がいないと何もできない人になったな、面白い。


「で、あやが送った写真を見たけど、気になることがある。うちに来る前に送ったこの写真はなんだ? これ、優の家か?」

「そうだよ、優の家。私……話があって、ずっと優の家で待っていたら先に小柳が来て、その後優が来て一緒に入ったよ。怪しいよね? あの二人の関係」

「ふーん」


 意外とやるな、優。

 まあ、あいつも割とカッコいいから。でも、すぐ彼女ができるとは思わなかった。

 俺は息苦しい家でずっと苦しんでいるのに、お前は女の子を自分の家に連れていって楽しいことをするのか。しかも、あんな遅い時間に……。あやの話通り二人の関係は怪しい。


 だから、奪うか、壊すしかないよな。優の大切なものを。

 もう一度———。


「てか、あやは小柳のこと嫌いなのか?」

「うん! 大嫌いだよ、どうしたの?」

「そうか。じゃあ、俺の話通りにしてくれない? あやの大嫌いな人を俺が送った場所まで連れてきてくれ」

「何をするつもり?」

「あやの気分を損ねた小柳に少し用があるからさ。俺に任せてくれ」

「そう? 分かった。一応頑張ってみるからね」

「うん、よろしく。あや」


 そう言いながらあやとキスをした。

 やっぱり、分かりやすい。

 そして小柳にいなか、前に一度会ったことあるけど、意外と可愛い女の子だったから少し気になる。あやが送った写真を見て一度会いたくなった。


 小柳ならできるかもしれない。

 なぜか、それを期待している自分に気づいた。面白そう。


「そろそろ帰らないと、健斗が帰ってくるかもしれない」

「そうだね、また何かあったら連絡するから!」

「分かった。ありがとう、あや」

「へへっ」

「あっ、そうだ。これ、あやが欲しがっていたネックレスだよな?」

「えっ? 知ってたの?」

「まあ、SNS見たから」

「あ、ありがとう! 本当にありがとう!!!」


 やっぱり、世の中で一番簡単なのはお金で解決できることだよな。

 もし、ものごとが上手くいかなかったらそれはお金の問題。そう、お金さえあれば無敵だ。世の中はそんなもんだ。名誉なんかどうでもいい。しょせん人たちはお金でその価値を決める生き物だからさ。


「じゃあ、また連絡してくれ」

「うん! バイバイ! 圭人」

「気をつけて」

「うん!」


 その後、すぐスマホを取り出してラインを確認した。

 パンを食べる前に送ったラインをまだ確認していない。マジでなんなんだ? いきなり無視するなんて。写真のせい? 俺のプロフがそんなにおかしかったのか? よく分からないな。


(圭人) いつ返事するつもりだ?


 そのまま10分間スマホを見ていたけど、既読にならない。

 ため息をついて、すぐスマホをベッドに投げた。

 どうやら俺のことをブロックしたみたいだな、あいつ……。


「くっそ、俺がこんなことを悩むなんて。くっそくっそ! 何もかも全部気に入らない。なんで俺が? なんで……?」


 イライラが止まらない。

 ちゃんとストレスを発散したのに、またイライラしている。


(圭人) おい。返事しろよ。


 くだらない……。

 仕方がなく、すぐ一樹に電話をした。


「おお、圭人。どうした?」

「どう過ごしてるんだ?」

「いや、毎日が地獄だな。朝から夜までずっと怒られてるからさ」

「じゃあ、一樹。もし下谷にちくった人を教えてあげたらお前どうする?」

「おいおい、マジか? 誰がちくったのか知ってるのか?」

「いや、まだだけど、もしあいつが誰なのか分かったらさ。お前がなんとかしてくれない?」

「へえ、調べてるのか? いいよ。誰なのか分かったらすぐ教えてくれ、圭人。俺、停学されて暇なんだからさ」

「だから、一樹は面白いんだよ。俺の親友。そうだ。清水とはどうなった?」

「聞くなぁ……。振られたから……」

「ああ、それは残念……。でも、いいよ。またいい女紹介してあげるから一樹」

「おお! 頼むぞ!」

「おう、また何かあったら電話する」

「オッケー」


 電話を切って、すぐ大声で笑ってしまった。ずっと我慢していたからさ。

 一樹……、お前なんかと清水が付き合うわけないだろ? 面白すぎる。マジで。

 でも、可哀想だから当分の間あいつに合わせてあげよう。あやもそうだし。


「ああ、やっぱり面白いやつだ。一樹は」


 そしてここで優だけが幸せになるのは……、不公平だよな。

 そう、不公平だ。


「別に悪気はないよ、優」


 そう言いながら俺はまた小柳の写真を見た。

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