文字が無くなるまでに。

mio

携帯小説のような誰かの想い。

 白く曇った窓ガラスに、指で文字を書く。

 ただ思いの丈を書く。

 当然、返事は無い。


「あなたが好きです」


 行き場の無い、この想いを消化したくて書いてみた。

 あまり効果は無い。

 報われることが無いことは、わかっていた。


 きっと今頃、彼の告白は上手くいっているだろう。彼に彼女ができれば、もう相談にのる必要も無い。

 

 相談にのる仲のいい友達、という立場を利用して浅はかな夢を見た。

 自分が彼女になる夢を……。

 そんなことは、あり得無いのに。


 窓ガラスの文字が消える頃に、私の想いも無くなればいい。


 さよなら、大好きな人。

 さよなら、ズルい私。


 全ての感情を振り払うように、窓ガラスの文字を殴る勢いで消し去った。


 無くなれ! 無くなれ! 全て無くなれ!


 唇を噛み締め、涙を堪え、席を立つ。


 彼女の心情とは裏腹に、向かう扉には光が満ちていた。

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