第11話 烏合の衆って輩は!
湖畔――キャンプ場手前の平地にロビーから謎の部下集団に誘導された15人がいて、ざわざわしている。中には里奈と美久姉妹と両親の姿もあり。女将と娘の麻美もいる。
「お静かに」ざわざわはおさまらない。「お静かに!」まだまだおさまらない。ピー。「痛ッ。うう、わぁ」の呻き声に一部のざわめきが止み。麻美が駆け寄り負傷具合を見る。女将が見守って。里奈家族が注目する。ようやく9人の一般客が負傷者に注目し、静まる。
「あなた方が一回で静粛にしていただければ。この娘さんが痛い目に合わなくても済んだものを。いいですか。場を弁えず集団をつくれば黙っていられない烏合性を恨みなさいよ。娘さん」と部下が手にしているスピーカーのボイスチェンジャーの声が注意する。
ホテル・最上階の客間の窓から見ている良男と高尾重男。ガウンを纏ってフェイスパックをした細身が割って姿を見せるが、室内灯とガラスの反射具合で姿がはっきりしない。
その真上の屋上――スタンドをたてて暗視自動焦点式スコープと4発装填弾倉をセットして、ケースの上に這いつくばるスナイパーマイカ(以後SPマイカ)。
つゆ知らずの湖畔に誘導された15人……部下が手にしたスピーカーボイスチェンジャ―声が次の指示を出す。数人の部下がレーザーガンを15人に向ける。
「では。里奈さんご家族は、部下の誘導に従ってご同行願います。残った皆様は大変恐縮ではございますが。湖に入って行ってもらいます。躊躇う方は一瞬の痛みで楽にします」
撃たれた女子の状態を見て患部をハンカチで押さえている麻美が問う。
「あなたは誰? どうしてこんなことをするの? どうやらそこの娘さん家族をどうにかしたいのが目的のようだけれど。こんなに部外者を巻き込むことはなかったのでは?」
「そうですね。あのフィストリー放送さえなければ。里奈さんご家族も含めて、こんなことにはならなかったでしょう。どういう訳か結婚式用のフィストリー素材などをハッキングして。公になさった何者かがいるようです。でも、個人情報を知ってしまった皆様には、大変申し訳ございませんが、他界していただきませんと。寝つきが悪くなりそうなものですから」とスピーカーからの声が答える。
考えて……「そぉ」と一旦引く麻美。女将に耳打ちして、見合って、まだ患部の止血に専念する麻美を、ホテルなどからの町明かりを盾にして陰らせる女将。麻美がこういった現場では光ある方から見ていると踏んで、自ら背を丸めた陰でスマホを弄る……。
のちに――通りに面した湖畔駐車場に、一般車を装うった覆面車とワゴン車数台が。黒っぽい防具服を身に着けた警官隊が物陰を利用して現場を囲む……。「到着。囲む」専用パッドに伝言。
「ねえ。さっき答えたということは、話せるのよね」とスピーカーに向かって問う麻美。
「まあそういうことになりますね」とさっきよりはハリをセーブした変声機の声が答える。
「でも、こんなあからさまでは、他の一般の目に晒されて。通報されるとは考えないの?」
「はい。想定済みですよ。そういう貴女は、警察関係者ですか?」
「余裕ねぇ」と含み笑う麻美が、スマホカメラで周囲を警戒する。「現場見えているよね」
ホテル最上階の3人。屋上でシューティングチャンスを窺っているSPマイカ……。
「この国にはまだまだ司法の抜け穴が。特に社会的VIPに対しては甘いものですよ」
「そおー」とスマホのライトを振る麻美。それを合図に待機中の警官隊が盾で場を囲む。
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