ギャル猛攻
ギャルが私のテリトリーを侵略し始めて一週間が経った。
「それでさ、あーしの飼ってる猫が可愛くてさ、ほら可愛いべ」
「あー、はいそうですね」
可愛い猫には罪はないが、読書中に話し掛けてくるのはやめて欲しい。小説に出てくる女性キャラが全部ギャルになった錯覚に落ちてしまう。話し掛けられても私は塩対応で「へぇ」とか「そうなんですね」と顔も見ずに言っているのだが、逆にその対応が新鮮なのか奈良 小鹿は勝手に話しを続けていく。
「それでミャーちゃんがさ、あっ、ミャーちゃんってのが、あーしの猫の名前なんだけどさ。そのミャーちゃんに私が『愛してるぜ♪』って言ったらなんて返して来たと思う?ねぇ、なんて返して来たと思う?」
ウザい顔近い。見てないけど、これ私が振り向いたらキスできるレベルまで近づいてるだろう。私が答えないと延々とこの質問をし続けるかと思うと頭が痛くなってくる。仕方ないから答えてやる。どうせ猫だからパターンは限られてくるだろう。
「ミャーとかですか?」
「ブッブー♪残念でした♪」
はい、ウザい。知らねぇんだよ、テメーのとこの猫がなんて鳴くなんて全くもって興味がねぇんだよ。私の右のこめかみの血管がピクピクし始めたので、自分が怒っていることに気が付いた。この文学少女を怒らせるとはな、大した女だよ。
「正解はシャー‼でした。マジウケるよね♪あはははっ♪」
あはははっ♪じゃないだわ。それお前嫌われてるんだわ。クラスメートにも嫌われて、愛猫にも嫌われるとか可哀想な奴だな。
私は憐れみを持って奈良の顔を見た。
「えっ、何その目、全然意味が分からないんだけど?」
どうやら私の意図には気付かない様で、首をかしげる奈良。それならそれで良いけどね。
帰り道も奈良は私に着いて来る。それで一方的なマシンガントークである。歩き読書は趣味じゃ無いので、ただただ奈良の話を聞きながら帰る日々である。話す内容としてはサッカー部の池脇先輩がカッコいいとか、購買でパン買えなかったとか本当にどうでも良い話ばかりである。そんなことイチイチ話す必要あるのだろうか?理解に苦しむ。
だがそんな奈良が突然こんなことを言い始めた。
「……ごめんね、あーしと話してても楽しくないよね」
どうやら私の塩対応が実は傷付いていたのか、しおらしくそんなことを言い始めたのである。ぶっちゃけ面倒臭い女だなぁと思った。たまにはちゃんと反応を返してやるか。
「いえ、私は奈良さんのどうでも良い話、それ程嫌いじゃないですよ。基本的に無表情なので気付かないかもしれませんが、たまにクスッと笑いそうになります」
私は真実だけを述べた。嘘を言って取り繕うのは苦手だし、この女に気を使う必要もない。
「ほ、本当に?全然分からなかったよ。楽しんでたの?ずっと何考えてるか分からないコケシみたいな顔してたのに」
「誰がコケシですか、ぶん殴りますよ」
「あっ、眉間にしわ寄ってる、これは怒ってるって分かるわ♪」
私が怒ってるのに、奈良の奴はケラケラと笑い始めた。そんな奈良を見ていると怒っているのが馬鹿らしくなって、私も少し笑ってしまった。
文学少女なのにギャルと笑いあうなんて不覚であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます