ギャルに優しい文学少女
タヌキング
ギャルとの邂逅
私の名前は飛鳥 阿澄(あすか あすみ)。何処にでもいる黒髪オカッパ頭の文学少女高校生である。えっ?何処にでも居ないって?いやいやそれはアナタが探して無いだけで、文学少女はアナタの生活の中に溶け込んでいるのだ。よく探してみて欲しい、もしかしたらアナタの近くに居るかもしれない、ほら居るじゃありませんか、アナタの隣に。
オホン、話が脱線し過ぎた。真の文学少女たるもの、本を読むのが好きというレベルでは無く、活字を定期的に摂取しないと死ぬ体であり、ゆえに休み時間は欠かさずに小説やら文学書を読んでいる。
人付き合いなどしないので友達など一人も居ないが、そんな孤高の自分が気に入っているのである。本さえあれば友達など本当に要らないのだ……別にダジャレでは無い。
さて今日も今日とて昼休みに読書と洒落込んでいるのだが、私の隣の席でめそめそ泣いている女が居て、多少集中力が乱されている。私の右隣の席の褐色肌の金髪の俗に言う盛られた髪型の女の名前は奈良 小鹿(なら ばんび)と言い、キラキラネーム持ちの私の苦手なタイプのギャルである。
このギャル一週間前ぐらいに転校してきた女なのだが、この学校には居ないタイプのギャルの中のギャルであり、最初は物珍しさに皆は友好的に接していたのだが、ギャル特有のノリや過剰なスキンシップ、パーソナルスペースにヅケヅケと入ってくる図々しさが災いしてなのか、クラスで浮いた存在になり、段々とクラスメートから避けられるようになっていった。
ハッキリ言って自業自得と言えば自業自得であり、そこに同情の余地はないが、隣で大粒の涙を流しながら、たまに「友達欲しいよぉ」と呟かれると流石に気になってしまう。とはいえ文学少女たるもの自分から話し掛けるものでは無い、自ら本を読むことで他者とのコミュニケーションを断ち、読書に全てを捧げるのが文学少女の矜持でありプライドでもある。だからここは何が何でも読書に集中……
「グスッ、何読んでるの?」
と思っていたら、向こうの方から声を掛けて来た。どうやら一人で居るのが限界だったらしい。涙でメイクがあらかた落ちてしまった、なんとも可哀想なギャルモンスターである。ここを無視するような鋼の心は私は持ち合わせていない。話し掛けられれば話を返すのが私のポリシーである。
「ロバート・ルイス・スティーブンソンの宝島です」
「長っ‼タイトル長いのウケるんですけど‼」
ちっ、ゲラゲラ笑いやがって、これだからギャルは嫌いなんだ。この程度のことをイチイチ説明しないといけないのか?
「いやいや、全部がタイトルじゃなくてロバート・ルイス・スティーブンソンが作者で、宝島がタイトルです」
「へぇ~、そうなんだ」
コイツ全く興味ないって感じだな。全くもって腹が立つ。少しは話してやっても良いかな?って思ったけど、こんな奴と話すことなど一つもない。
「すいません、読書の途中なので話し掛けないでもらって……」
「ねぇねぇ、このウサギのぬいぐるみ可愛くない?この間ユーフォーキャッチャーで一発で取れたんだよ?凄くない?」
話聞けよ。一方的に球を投げてこようとすんなよ。会話はキャッチボール、コチラが投げ返すまで次のボールは投げるんじゃない。
ウサギのぬいぐるみは本当に可愛いから、尚のこと腹が立った。
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