第12話
「あの」
放課後。
ここ最近の流れと変わらず柊と二人で下校している途中に彼女が足を止めて俺にたずねた。
「ん? なにか忘れ物でもした?」
「ええと、そうじゃないんだけど……連絡先聞いてもいいかな?」
「あ、そういやライン交換してなかったっけ」
「うん。急に休まないといけない時とか、連絡できたら便利かなって」
「じゃあ、ほら。これ、読み取って」
QRコードを出した画面を見せると、柊は慌ててスマホを出して読み取ってから。
ゴゾゴゾとスマホを触っているとラインが届いた。
『これからよろしくお願いします』
メッセージを見る俺に隣で「返事、してね?」と。
「う、うん。今?」
「うん。返事ないと、寂しいし」
「そ、それもそうかな。ええと」
隣にいる柊になんて送ればいいかわからず、無難に『こちらこそ』とだけ。
すると柊が。
「あとで返事、ちゃんと返すね」
「い、いいよ別に俺は気にしないし」
「ううん、返事する。なんか悪いし」
「そ、そう?」
「うん。でも、ちゃんと返事してね?」
「そ、それはまあ」
互いに返事をしないまま終わるのが悪いとなってメッセージを送りあっていたらいつやり取りを終わればいいのだろう。
なんてことを少し考えていると店が見えてきて。
玄関先の母さんに迎えられて二人で店に入った。
◇
「いらっしゃいませー」
「い、いらっしゃいませ」
今日は柊と二人でホール業務。
先日雑誌に掲載されたことも影響してか夕方に店を再会すると店内はすぐ満席になり、何かを教える暇もなくとりあえず俺について回ってもらっている。
「パンケーキ二つお願いします」
「かしこまりました。ではお写真よろしいですか?」
店に来る一見さんはほとんどがパンケーキを頼む。
それに対する対応も随分と慣れたものだ。
最初は借りたスマホで写真を撮るだけで手が震えていたっけな。
「撮れました。こちらの写真でよろしかったですか?」
「わー、いい感じ。お兄さん写真上手ですね」
「いえいえ、毎日やってますから」
「じゃあこれでお願いします」
「かしこまりました、少々お待ちください」
借りたスマホを厨房の方へ持っていき父に渡してから再びホールへ。
すると奥のテーブル席の客に呼び止められて戸惑っている柊の姿が。
「君可愛いね。ここの娘さん?」
「あ、いえ、バイトです」
「へー、高校生? 俺たち近くの大学生なんだけどさ、今度カラオケ行かない?」
「か、からおけ? いえ、それは」
「いいじゃんいいじゃん。そうだ、連絡先教えてよ」
スマホを差し出してニヤニヤしながら柊を見る茶髪の男二人組。
それに対して明らかに動揺する柊を見て、慌てて駆け寄った。
「あの、すみませんお客様。当店ではスタッフへのナンパは」
「禁止なんてどこにも書いてないけどなあ」
スマホを差し出している方が得意げに言ってから店の張り紙を指差した。
『当店の注意事項』と書かれたその紙には、似顔絵パンケーキ注文の際のスマホの受け渡し時の注意事項が書かれている。
しかしこの男の言うように、スタッフに対してのナンパ行為などへの記載はない。
これまで何度かマナーの悪い客はいたが、ホールの仕事は基本俺か母なので、ナンパなんてもちろんだがされたことはなく。
揚げ足を取られた格好となったが、隣で目を伏せて怯える柊を前にして引くわけにはいかない。
「店に書いてなかったら何してもいいってわけじゃないですよね?」
「なんだよその態度? 別に何もしてないだろ」
「迷惑がっています」
「その子は何も言ってないけどな」
ねー、と。
柊に声をかける茶髪の態度に俺は珍しく怒りが込み上げた。
「これ以上しつこいと警察呼びますよ」
「な、なんで警察なんか」
「父の知り合いがそこの交番にいるので。通報しますね」
「ま、まてまて! わ、わかったよ帰るから」
慌てて二人組は席を立って店を出て行った。
その様子に他のお客さんたちも少しざわついていたがやがて静まって。
一息吐いてから柊を連れて店の奥へ戻った。
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