第22話 親

 一階の店舗で、

「さぁ、オークションだな」

「また出したんですか?」

「あぁ、とりあえず虹の『全属性魔法』と金の『雷魔法』『氷魔法』『回復魔法』『瞬足』だな」

「凄い売るね!全部青玉ね?」

「今回はそうだな」

 全部青いスキルボールだ。

 虹の玉でも良かったが、どうせだから全部青いスキルボールにした。


 オークションでも青いスキルボールの価値を上げていく。

 まぁ中身がわかるのは俺だけだけどね。

 さて、パソコンの画面に移ると、全部値段が上がっていってるな。

 なかでも『全属性魔法』は飛び抜けている。まぁ、虹スキルだからだけどね。

 やはりノークレームだからみんな買いに来ているようだな。


 市場価格もまちまちだからみんなやすくで手に入れたいだろうし、もっと出せば良かったな。

「おお、『回復魔法』が一億超えた?」

「『回復魔法』なら8000万がいいところですけど」

「今回はなんで?」

「こっちと顔繋ぎたいんじゃない?」

「あぁ、ありそうだな」

 顔を繋いで何か目的があるのか?

「まぁ、その時聞けばいいか」

「あ、最後の『全属性魔法』も売れたね」

「全部東京だな、また行くのか」

「私達も行くし」

「そうですね」

「よし、三人で行こうか」

 3人で翌日からの旅行に備えると早めに寝る。


「久しぶりね!最初は見学もできなかったね」

「私は初めてですけど人が多いですね」

 空港からタクシーで東京に向かう。

「さて、指定された場所は喫茶店か」

「まずは金のスキルボール?」

「だな、いってみよう」

 喫茶店に入りパソコンを広げて待っているとまず1人目の『瞬足』の買い手がきた。


「うは、美人が2人も?イケイケだなぁ」

「私こう言うものです」

「あ、どうも。俺は狭間甚太ハザマジンタです、よろしくぅ」

 と金髪のチャラいのが来たな。

「はい、確認が取れましたのでこちらをお渡しします」

 箱に入れたスキルボールを渡す。

「ちゃんと『瞬足』ですか、いや、信じるしかないか」

 と開けてステータスを見ると嬉しそうに笑う。

「はい!ちゃんと『瞬足』でしたわ!ありがとうございます」

 とまともな受け答えだな。もっとチャラいと思ってたのに。

「そんでものは相談なんですが、他にもありませんか?出来れば安くして欲しいのですが?」

「物によりますね、どう言うスキルをご希望ですか?」

「『火魔法』が欲しいんですわ」

「なら100でどうですか?」

 500万くらいだからな、値下げしてそれくらいなら?

「え!マジですか!いやった!いってみるもんだ!」

 100万と青いスキルボールを交換する。

「これでわいも魔法使いや!」

 開けるとちゃんと火魔法がステータスに表示されたらしく、その場で指先に炎を灯す。

「よっしゃ!ありがとうございました!」

「いえ、お買い上げありがとうございます」

 甚太はそのまま帰っていった。

 その場で待つこと1時間、パスタを食べながら待つと今度は女の人。

「私はこう言うものです」

 と名刺を渡すと、

「はい、私は猿渡葛葉サワタリクズハと言います」

「はい、確かに確認しました」

 箱に入ったスキルボールを渡すと、

「本当に青いんですね。……はい、開けます」

 目をつぶって開けると金の光が入っていく。

 これで『氷魔法』が表示されたはずだ。

「やった、『氷魔法』だ。手が届かないと思ってたのに」

 少し泣いてるように見えるが、

「ありがとうございました」

 とサッサと出ていく。

 やはりダンジョンで試したいんだろうな。

「みなさん喜んでますね」

「そりゃ、欲しいスキルが手に入ったら嬉しいね!」

「そうだな」

 そこからまた待つこと30分ほどで急いできた防具の男。

 こちらが手を挙げるとニコッと笑いのしのしと歩いてくる。

「『青玉』さんに会えるなんてな!」

「あはは、一応名刺を」

 と渡して、

「俺は『アルク』ってパーティーの剣士で土方幸三郎ヒジカタコウザブロウだ」

「はい、確認が取れたので」

 箱に入ったスキルボールを渡す。

「本当に青いスキルボールだな、よし!開けるぞ」

 金色の光が入っていき『雷魔法』がちゃんと入ったみたいだな。

「おぉ、これで戦力アップだ!ありがとう!」

 握手を交わして別れる。

「勢いのある人でしたね」

「凄い早かったね」

「まぁ。こんな時もあるさ」

 店を出るともう夕方になって来ている。

 さぁ、家に帰るか。

 タクシーで家に向かう。


「ただいま!」

 ドタドタと走ってくる父さんと母さん。

「え?ど。どっちが彼女なの!」

「私ね!」

「いえ。まだ決まってません」

「と、とりあえずあがろうか?」

「「はい」」

 と上がっていくと、ご馳走が並んでいる。

「なんで?」

「いや、お前が女の子連れてくるって言うから!なんで2人なんだ?」

「こんな美人が2人同時に言い寄ってきたら俺も選ばないといけないだろ?でも、選べないんだよ」

「と、とりあえず座って、乾杯しようか!」

「はい、お父様」

「あ、ずるいね!お父様、どうぞ」

「ふおぉぉぉ!嫁が2人でもいいんじゃないかな?」

 と、バカなことを言う父さん。

「バカ息子がごめんなさいね、優柔不断で」

「いえ、それだけ真剣に考えてくれてるので」

「そうね、私達も選んでもらう為に必死ね」

 そうなんだよな。俺が決めないといけないんだよな。

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