第10話 帰国


「カンパーイ」

「「乾杯」」

 と機嫌のいいソフィアにホッとしているエマ。

「私はこのスキルでトップに立つわ!」

「凄いですね、俺は小さな店で満足ですけどね」

「それは勿体無いわ!貴方もアメリカで夢を掴みなさいよ!」

「あはは、俺には日本があってるんで」

「ムー、本当にもったいない!貴方パートナーはいるの?」

「残念ながらいませんね」

「こんなカッコいいのに?なぜ?エマはどう?」

「エマさんもソフィアさんもお綺麗で俺なんかじゃ釣り合わないですよ」

「エマ!絶対この男を落としなさい!」

「私ですか?」

 と困惑気味のエマさん。

「こんな良い男そこら辺にはいないわよ!私もダーリンがいなかったら逃さないわよ!」

 良かった、ソフィアにはダーリンがいるんだな!さすがにソフィアは強烈すぎるからパスだ。

「よ、よろしくお願いします」

「え?あ、こちらこそよろしく」

 と顔を赤くするエマさん。

 いやいや、俺なんかにエマさんは流石に勿体無いでしょ?


「ふぅ、食べましたね」

「お口に合ったかしら?」

「はい!美味しかったです」

「それじゃあ、エマ、お送りして、私はまだやることがあるから」

「はい」

 とホテルの地下駐車場から近くのホテルにチェックインする。

「エマさん、今日はありがとうございました」

「い、いえ、こちらこそ……」

 突然声が小さくなるが、

「あ、あの!私なんてどうでしょうか?」

「え?あ、あの話?エマさんならまだ良い男がいますよ。私には勿体無い」

「そ、そんなことないです!わ、私諦めませんから!」

 と言って走って車に乗り込む。


 うーむ。どうやら本当にモテ期到来らしいなぁ。


 しばらくは鹿児島でぼーっとしようかな?


 次の日にはアメリカから日本へ飛ぶ飛行機に乗る。

 今回はロサンゼルス空港からだから20時間くらいのフライトだ。

「エマさんもお元気で」

「わ、私も日本にいきますから!」

 とハグをされてしまう。

「待っててくださいね」

「え、あの、えぇ!」

 と時間が来てしまったので行くしかないが、日本に来るの?

 鹿児島なんて何にもないけど?


 飛行機に乗ってあれこれ考えるが、どうやってエマさんを俺から離そうかと考える。


 答えの出ないまま鹿児島空港に降り立つ飛行機。

 バスに乗って薩摩川内市に到着すると、今度は親方から拳骨をもらう。

「いったいなぁ!」

「お前何か忘れてないか?」

「なんだよ!金は払っただろ!」

「俺たちだけに任せて、見にも来ないとはどう言うことだ!」

 親方の言う通りだが、

「こっちも色々あったんだよ!」

「チッ!ならしょうがねぇな!ほら見てみろ?」

「お、おぉ!俺の店か!」

 隣の空き家からだからデカく感じるな!

「ちゃんとしてるだろ!お前の言った通りに作ったぜ!」

「ありがとう親方!これでみんなで酒盛りしてくれ」

「お、おう!ありがとよ」

 と渡す予定だった10万を渡して親方に礼を言う。


 中に入ってみると広い店内にショーケースが並んであり、棚もちゃんとつけられている。

 カウンターから防犯カメラも見れるし、爺ちゃんの掃除道具入れも置いてあるな!

 奥から2階に行くとリビングに寝室、あとは保管室なんかにすれば良い部屋が二部屋ある。

 水回りもバッチリで広い風呂に感激している。


 さて、『Mr.ボール』の再出発だな!


 まずは掃除をしてみるが、できたばかりで掃除のしがいが無いな。

 スキルボールを並べて行く。

 さすが頑丈なショーケースにしてもらったので簡単には開かないようにしてある。

「ごめんください」

 と警察官がやって来た。

「はい。なんでしょうか?」

「あ、こちらの店主ですね?あの事件の犯人で『マスターボール』の代表は捕まりましたので、ご報告をと思いまして」

「あぁ!ありがとうございます!」

「いやぁ、ゆすりや窃盗なんかの余罪が出てくるし大捕物でしたよ」

 そらこんな小さな店にもやるんだから余罪は沢山あるだろうな。


「それは良かった。ありがとうございます」

 と言って去って行く警察官に感謝し。


 ゆっくりと時間が過ぎて、隣の肉屋のおばちゃんが来たからお土産を一緒に食べながら、ここ最近のことを話す。

「宗ちゃんはちゃんとしてればよかにせ良い男なんだから普段からちゃんとしてなさい」

「あはは、俺は俺だからね、まぁ、できるだけちゃんとするよ」

 と東京とアメリカの土産を持たせると帰るおばちゃん。


 さて、今日はもう良いか、とシャッターを閉めると、鍵をかけて中に入る。

 2階に登り風呂を溜めてゆっくり浸かると、上がって収納からビールを出して飲む!

「くはぁ、最高ー」

 そういえばまだ家具家電を買ってなかった事に気がつき、まぁ、明日買えばいいかと前のやつを収納から出して行く。


 テレビにはCMで母さんとこの美容液が流れていた。

 母さんが社長で、父さんは今どこら辺にいるのかな?父さんは錬金術で頑張ってるだろうなぁ。

 まぁ、俺はゆっくり気長に頑張るさ。


 

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