第24話 そこに居たナニカ

 ◆◇◆◇◆



 なんだ、これ。

 彼が立ち止まった位置から、それは見えた。

 おそらく、誰かが居た形跡。幼い子どもだったのだろうか、埃をかぶってぼろぼろになった積み木や人形、本などが落ちている。


「なんでこんなものが?」


 俺が近づこうとしたのを彼に止められた。


「触らないほうがいい」

「ここから見るだけで充分、ということか?」


 物の感じからして十数年前、経っていたとしても四、五十年前といったところだろうか。この屋敷が放棄されたといっていた時代よりも新しい物のような気がする。


「ここに、飼われていた子どもがいた」

「あんたは知っていたのか?」


 彼は首を横に振る。


「僕は、人間だと思っていなかった」

「あ……子どものような何かがいることは察していたのか」


 道理が異なっていて、よく知らなかったからこその勘違い。

 それがこの場所にもあるということだろうか。


「助けを求められなかったこともあるし、そもそもこの屋敷の仕掛けの一部だと思っていた」

「見殺しにしてしまったのか?」


 俺の問いに、彼は首を横に振る。


「どこかに連れ去られてしまった。まだ幼かったのに」

「連れて行ったのは、飼っていた連中なのか?」


 再び彼は首を横に振る。


「見ない顔だったが、知った気配の人間だった。あの子は嬉しそうに笑っていた。外に出してもらえたことが、嬉しかったのだろう」

「それなら、ある意味ハッピーエンドに聞こえるが」

「ここまで、だったらな」


 彼は唇を引き結んだ。

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