純粋な想いは、きっと誰かに届く💓✨ 〜それぞれの恋物語〜
ほしのしずく
第1話 大好きなキミに届け、この想い!
今日はバレンタイン。
キミのことを考えてやれる限りのことはした。
それとなーく好きな髪型とか聞いたり、意識してもらうために自分から挨拶をするようにとかも。
なんだったら1年かけて、一緒に登校するまで持ち込んだ。
我ながら、よーくやった!
あとは、想いの込めた手作りチョコを渡すだけ。
ただ、それだけなのに……。
「これはダメだ……」
たくさんレシピを調べて失敗しないバズチョコっていう一番高評価の多いやつを参考にした。
それでも不安だったから、温度も測りながらしたし、水が入らないようにとかも注意した。
けれど、前日に冷やし固めたハート型のチョコは、真ん中から割れて見るも無惨な姿となっている。
「うっわ! 中身見えちゃってるー! これじゃ……ぜ、絶対、振られる」
ただハート型のチョコが割れただけ。
でも、一喜一憂しちゃうのだ。
恋愛初心者、岡本つぐみ16歳。
こういう時に限って、前日にチョコ準備できているからとか言っちゃうお馬鹿さんなのである。
「とか、自分で言ってどうするよ……」
というか、この日の為にわざわざバイトの帰りにデパート寄って、高いクーベルチュールチョコレート、好きって聞いたフリーズドライの苺も買ったのに……。
「お金も時間も想いも込めた結果がこれって……」
目の前には、赤いリボンが付いた半開きになったままの包装箱、そして混ぜ込んだフリーズドライの苺が見えているヒビ割れたハート型のチョコ。
「い、今から買いに行くとか?」
横に置いていたスマホをチラリ。
「7時半じゃん……あと、10分で来ちゃうよ〜!」
私がキッチンで慌てふためいていると、
――ピンポーン
とうとう、運命のベルが鳴った。
『おはようございます〜! つぐみさん居ますか〜?』
この柔らかくて、耳が幸せになる声……間違いなく
いつもなら声を聞いただけで幸せな気持ちになるのに、今日は出たくない。出たら、この割れたチョコ渡さないといけなくなる……。
「どう思われるか怖いよ……」
躊躇っていると、玄関の方からお母さんの声が聞こえた。
「ちょっと、つぐみー! 叶汰くんが来てるわよ〜!」
お母さんのバカ、出ないといけなくなちゃったじゃん……。
本当は出たくないけど、ここで断るのも嫌。
だって、私は叶汰くんが好きだから。
だから、私は割れたチョコをリボンの付いた包装箱に入れて、玄関へと向かった。
☆☆☆
いつもは輝いて見える通学路。
今日はなんだか、空の青もあせて全てがモノクロに見える。
「そういやさ……そのチョコってどんな感じ?」
期待していたんだ。
声が上ずっているし、いつもよりソワソワしてる。
そうだよね、楽しみにしててなんて言われたらさ。
「あー……いやさ、ちょっと失敗しちゃってね……」
「失敗?」
「うん、もらっても嬉しくないと思うんだ」
私がそう言うと、叶汰くんは何を想ったのか手を出してきた。
「バカか……好きな奴からのチョコを喜ばない奴なんて居ねぇよ」
「え――っ?!」
「いいから! んっ! チョコ!」
「は、はい……」
よく分からないまま、叶汰くんに手作りチョコを渡した。
「開けていいか?」
「うん……」
渡しちゃった……手が震える。
胸が苦しい、鼓動が煩い。
さっきのはどういう意味?
頭の中がぐるぐるしてなにも考えられない。
そんな中、叶汰くんは、包装箱のラッピングを丁寧に外して、割れたチョコをパクっと口に放り込んだ。
少し口の中で転がすと、
「……ん、めちゃうまいじゃん」
私に見せてきた今まで見てきたどの表情よりも、満ち足りているように感じた。
私がぼーっとしていたのが、気になったのか、
「その……ありがとうな……」
叶汰くんは頭を掻きながら照れくさそうに優しく微笑んでくれた。
どうやら私の想いは届いていたみたい。
作って良かったな♪
「ううん♪ 来年も作ったげる! もっと美味しくて可愛いやつ!」
そう告げて数歩。
私は、この日――叶汰くんと初めて手を繋いだ。
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