第2話 ミッドウェー海戦

 広大な海の上、轟音と爆音が立て続けに鳴り響く。一九四二年、アメリカ領ミッドウェー島周辺の海は悲劇と化していた。

 航空母艦「赤城」の甲板上に整然と並んでいた爆撃機などの艦上戦闘機たちはもうほとんど残っておらず爆撃により激しく損傷していた。飛行甲板には整備員の怒号と爆発音が響き渡るなか、敵機を迎撃するため戦闘機が空へと舞い上がる。だが、無情にも敵機の襲撃を許し、赤城は絶えることのない爆撃に晒された。甲板上では機関士たちが汗だくで火災を鎮圧しようと奮闘していたが、煙と炎が続々と上昇し、艦内の爆発音が再び響いた。

 甲板士官は赤城の轟沈を悟ると防火扉を開放し、負傷者と救護班を移動させ、駆逐艦「嵐」と「野分」への移乗を誘導する。爆撃により負傷した兵士の肩を担ぎ、救助に加勢する兵士のひとりに山本勇の姿があった。

 「死ぬな。生きてここを脱出するぞ!」

 山本は新人の若い兵士を励ましながら、甲板へと移動する。兵士は被弾した足から大量の血を流し苦悶の表情を浮かべている。早く赤城から脱出しなければ。山本はこのミッドウェーで死ぬつもりなど毛頭なく、必ず生きて帰ると自らを鼓舞し続けた。

 機関室を上り、甲板へと山本たちが出た直後、赤城の前方に位置する飛行甲板から大きな爆発音が鳴った。格納庫内の魚雷と爆弾の誘爆によるもので瞬く間に甲板は火の海に包まれる。間一髪、山本たちは甲板に火の手が回りきる前に野分に移ることができ、野分の下士官兵たちに救護された。野分には山本たちのほかに約二百名ほどの乗組員たちが移乗していた。

 自力航行不可能となった赤城は飛行甲板から火柱を上げながら、動きを完全に止めていた。少しでも機関室からの脱出が遅れていたら山本は今頃、あの炎に身を焼かれていただろう。格納庫から誘爆を続ける赤城を見て、山本は悔しさと安堵が入り混じった複雑な感情を抱いていた。

 そして、周囲の情報から、空母「飛龍」「蒼龍」そして「加賀」が轟沈したことを知らされた。

 たった一度の海戦で空母四隻、航空機約三百機を失い、大日本帝国はアメリカに大敗を喫することとなった。

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