ゲーム世界の主人公に転生した件について〜平凡な俺が前世の知識と経験を活かしてゲームクリアを目指す〜

M.N

第一章 『入学試験編』

第1話 『転生』

「⋯⋯⋯え?」


気がつくと、俺はどこか見知らぬ部屋にいた。


周囲を見渡す。


壁にもたれかかる剣。

床に置かれた木製の杖。

机の上に並べられた革製の防具。


ファンタジー世界に出てくるような品々が、部屋中に広がっていた。


「これは、一体⋯」


混乱する頭を押さえつつも、好奇心に駆られ、俺は剣に手を伸ばした。

金属の冷たさとずっしりとした重みが手に伝わる。



ふと、視線が鏡に映る自分へ向いた。


「は?」


思わず声が漏れる。

鏡に映し出されているのは自分の姿ではなく、見知った青年――神代かみしろれんの姿だったからだ。


『デーモン・インベージョン』、略して“デモイン”。

現代都市を舞台にし、剣や魔法を駆使して、ダンジョン内に現れるモンスターを討伐するアクションRPGゲーム。


神代かみしろれんは、そのゲームの主人公である。






時間をかけて思い返すと、状況が少しずつ整理されていった。


簡潔にいえば、俺は事故死により“デモイン”の世界に転生した。


そう断言出来る理由が2つある。


1つは、俺自身が神代かみしろれんというキャラクターになったこと。

もう1つは──────


「ステータスオープン」


────────────────────

神代連:15歳

職業【勇者】

レベル1


体力:F

魔力:F

筋力:F

俊敏:F

耐久:F


コモンスキル:『基礎剣術Lv.1』『基礎魔法Lv.1』

レアスキル:無し

エピックスキル:無し


専用スキル:無し

────────────────────


目の前に出現したプレート。

“デモイン”のゲームシステム──ステータス。

前世では絶対に有り得ない、数字や能力値を可視化することができる。


──────間違いない。確かに俺は、ゲームの世界に転生した。




部屋の窓から外の景色を眺める。

家やビルの隙間に、巨大なダンジョンが点在していた。


夢ではない──そう強く実感させられる。


「これからどうするか⋯」


前世の俺は、何の取り柄も才能もない平凡な高校生。

特に将来の夢も無く、毎日をただ漠然と過ごしていた


けれども、今世は違う。

ステータス、スキル、装備、ダンジョン……。

俺は“デモイン”をやり込んでいたから、この世界の重要な知識を数多く持っている。


つまり、何者でもなかった俺が、ここの世界では何にでもなれる。



深く息を吸い、静かに吐き出す。


“デモイン”は決して易しいゲームじゃない。

モンスターに負ければ、今度こそ本当の『死』が待っていかもしれない。


もちろん、冒険を避け、前世のように平凡に生きる道はある。


だが⋯⋯


「──────これはチャンスだ」


知識と経験が全て武器となる。

前世では味わえなかった冒険と成長を、この世界で掴むことができる。


だったら答えは1つ。


決意を固め、ゆっくりと呟く。


「決めた。俺はこの世界でゲームクリアを目指す」


この瞬間から、俺の新しい人生が始まった。

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