第2話 夢で呼び合う二人

「…………」(そわそわ)


「…………」(そわそわしながら無駄に動き回る)


「……あっ」(目が合う)


「あーーー!!!」


「やっときた!!」


//SE 彼女がこちらに駆け寄ってくる音


「遅いよぉ。来ないかと思ったじゃん!」


(悲しそうに)

「約束したのに中々来ないから……また一人ぼっちに戻ったのかと思ったじゃんかぁ」


(更に悲しそうに)

「もう夢の世界で一人きりは嫌なんだよぉ……」


「ぐすっ……」


//SE ポンと音をいう生成音(音と共にハンカチを創造する)


(彼女の涙を拭う)


「あ、ありがとう」


「優しいんだね。キミ」


「……ん? 今度から夜更かししないですぐ寝るって?」


「来るのが遅かった理由、夜更かしかー!!」(ポカポカと胸を叩いてくる)


「前言撤回だよ! 全然優しくないなキミ! 女の子を待たせる理由として最低だよ!?」


「……まったくもぉ。いつも何時に寝ているのさ?」


「深夜3時ぃ!? いつも4時間しか寝てないって!?」


「ショートスリーパー自慢って一番しょうもないからね!」


「明日からは早く寝ること! そして私に会いに来なさい!」


(ギリギリ聞こえるくらいの小声で)

「……こっちは早くキミと会いたいんだよ」


(頬を膨らませて怒りながら)

「今日だってキミと会えることを楽しみにして無駄にそわそわしちゃっていたんだから」


「……むー。今更謝られてもなぁ」


「もう起きちゃおっかなぁ!」


「えへへ。先に起きられたくなかったら私のこと捕まえてみるんだね!」


「こっちだよぉ~だ!」


「うふふっ」


//SE 駆けていく二つの足音

//SE 段々と遠ざかっていく足音


(徐々にフェードアウト)



  ◆



(息切れしながら)

「夢中になって追いかけっこやっちゃったね」


「おにごっこなんて何年振りだろぉ」


(両手を大きく伸ばして叫ぶように)

「楽しかったーー!!」


「キミも楽しかったよね!? ねっ!?」(迫る様に顔を近づける)


(嬉しそうに)

「そうかそうか! キミも楽しかったかー! 良かった!」


「……って、いつまでも『キミ』呼ばわりってのも変だよね」


「も、もう、私達友達だし。名前とかで呼び合っちゃう?」


「でも、お互いのことをよく知らないままのミステリアスな友達関係も捨てがたいよね」


「そうだ! ニックネームで呼び合おうか!」


「私のあだ名。キミが決めてよ」


//SE カチ……カチ……と時計の針が進む音(腕を組んで深く考える仕草)


「……おっ。その顔は思いついた顔だね。聞かせて」


「ドリーミング=ビューティ子!?」


「正気かおまえ!?」


「冗談かい! 変なボケ挟むな!」


「真面目に考えなさい!」


//SE カチ……カチ……と時計の針が進む音


「……夢子?」


「んー、さっきと発想が似ているけど、ドリーミング=ビューティ子よりはマシか」


「よし! 決定! 今日から私は夢子ちゃん!」


「じゃあキミのことは夢太郎くんって呼んじゃおうかな」


「なんでドン引きしてんの!? 『そりゃねえよ』みたいな表情やめてよ!? キミのネーミングセンスと大差ないからね!?」


「嫌がるならドリーミング=マッスル男って呼ぶからな!」


//SE どこからか聞こえてくるサラサラサラと砂が崩れるような音

(視界が狭まっていく)


「ん? めまいがする?」


「あー、それ、目が覚めるときの現象だ」


「もうすぐおはようの時間っぽいね」


「ってことはバイバイの時間だね夢太郎くん」


「悲しそうな顔しないの。明日もまた一緒にここで遊ぼうよ」


「私、待っているから」


「だから明日は夜更かししないで早寝すること!」


(ウインクしながら)

「夢子ちゃんとの約束だからね」

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