第4話:セバスにエレノアに嫌われてる理由を尋ねていく
翌週のとある日。
「今日のトレーニングはこれで終わりにしましょう。お疲れさまでした、坊ちゃま」
「はぁ、はぁ……お疲れさまでした……はぁ、はぁ……」
―― バタンッ……
そう言いながら俺はすぐに地面に倒れ込んでいった。
という事で今日もセバスによる地獄のスパルタトレーニングを受けていた。マジで毎日死ぬほどキツイんだが……。
でもキツイ分、身体の脂肪はだいぶ落ちてきたし、筋肉もちょっとずつ付いてきた気がする。これなら近い内にスマートな身体を手に入れる事も出来るかもしれない。そしたらこんな地獄のトレーニングはすぐにでも卒業してやるからな……!
「それでは明日もビシバシと鍛えていきますから、今日の疲れを残さないようにしっかりと休んでくださいね、坊ちゃま」
「はぁ、はぁ……わ、わかってるよ……あ、そうだ。そういえばセバスさ……はぁ、はぁ……」
「はい? どうしましたか?」
「はぁ、はぁ……えっとさ、物凄く変な事を聞くと思うんだけど……俺ってどうしてあんなにもエレノアから嫌われてるんだ?」
「……はぁ?」
俺は呼吸を整えていきながらセバスにそんな事を尋ねた。
俺はこの一週間近く何とかしてエレノアと仲良くなりたいと思って何度も話しかけていたんだけど……でも俺の毎回エレノアに完全に無視をされてしまっていた。
妹からこんなにも毎回無視されるのは普通に辛いし、ここまで完全に無視されまくってるというのはエレノアは俺の事をかなり嫌っている証拠だとも思う。
だから俺がこんなにもエレノアに嫌われてる理由が知りたくて、それで唯一話せるセバスに俺がエレノアに嫌われてる理由を尋ねてみたという訳だ。
「ふむ。そんな事を尋ねるなんて……もしかして坊ちゃまは、今までのエレノアお嬢様への愚行の数々を忘れてしまったのですかな?」
「ぐ、愚行? 俺って今までそんな酷い事をしてたのか……?」
「えぇ、とても酷い事ばかりしていましたよ。普段からエレノアお嬢様に足をひっかけてわざと転ばせたりとか、頭を叩いたりとかしてました。それにブスとかチビだとか暴言を浴びせたりもしてましたね。あとは一番酷かったのはエレノアお嬢様が凄く大事にしていたアクセサリーを壊したりもしてましたね。まぁそんな最低な事ばかりしていたのですからエレノアお嬢様に嫌われて当然でしょう」
「えっ……えぇっ!? お、俺ってエレノアにそんな酷い事をしてたのか……?」
「そうですよ。ほぼ毎日陰湿なイジメをネチネチとしていました。もちろん坊ちゃまは我々使用人たちに対してもイジメは沢山してましたが、特にエレノアお嬢様に対してが一番酷かったですね。そしておそらく坊ちゃまは大した理由もなく、ただ年下かつ身内という事でイジメやすかったからエレノアお嬢様をイジメてたんでしょうな」
「そ、そんなっ!? お、俺……最低過ぎるだろ……!!」
今までの俺は一体何をしてるんだよ……そんな最低な事をしてるなんてふざけてやがる!!
そんな酷すぎる事をしてたら、そりゃあエレノアは俺との対話を完全に無視するに決まってるじゃないか……!!
(く、くそ……これは色々と贖罪する事が多すぎるようだな……)
だけど今までの俺の非道な行為の数々を教えて貰えただけでも大きな収穫だ。これで俺が全力で謝らなきゃいけない事の数々がわかったからな。
そしてこれは流石にただ謝るだけでは絶対に駄目だ。ちゃんと誠意を見せてしっかりと謝らなければならないだろう。だから俺は……。
「……セバス。そのエレノアが大切にしていたというアクセサリーは今は何処にあるんだ? もしかしてもう捨てられちゃったのか?」
「? いえ、エレノアお嬢様のアクセサリは私が一旦預かっておりますよ? どうにか直せないかと涙を流しながらお嬢様が相談に来られましたので。ですから街の雑貨屋で強力な接着剤を取り寄せて貰っている所です。それが届いたら私が仕事の合間にコツコツと直していこうと思っている次第です」
「そうか……わかった。それじゃあセバスさ、そのアクセサリーを直すの……俺にやらせてくれないか?」
「え? 坊ちゃまがですか?」
「あぁ。エレノアに悪い事をしたと思ってるんだ。だからちゃんと謝りたくて……でもただ謝るだけじゃ駄目だと思うから……だからそのアクセサリーの修理を俺にやらせてくれ。頼むよセバス……」
「……坊ちゃま」
俺はそう言いながらセバスに頭を下げてそうお願いをしていった。するとセバスは少しだけビックリとした表情を浮かべてきた。
だけどセバスはすぐに優しく微笑みながら俺にこう言ってきてくれた。
「ふふ。どうやら坊ちゃまは本当に心を入れ替えたようですね。わかりました。それでは接着剤が手に入りましたら坊ちゃまにお渡ししますよ。ですから私の代わりにエレノアお嬢様のアクセサリを直してくださいね」
「ほ、本当か! ありがとうセバス! 恩に着るよ!」
「いえいえ。坊ちゃまの頼みとあれば断る道理はありませんので。ですが坊ちゃまがエレノアお嬢様に今まで酷い事をしてたという事実は決して覆りませんからね? ですから、ちゃんとアクセサリーを直したら改めてしっかりと誠心誠意を込めてエレノアお嬢様に謝るんですよ?」
「あぁ、もちろんわかってるよ。ありがとう、セバス!」
という事でエレノアの大事なアクセサリーを俺の手で直していこうと決意した。そしてエレノアにしっかりと謝罪していく事も決めていった。
まぁアクセサリーを壊してしまったのは俺だから、エレノアが俺の謝罪を受け入れてくれるなんて自信は全くないけど……でも今の話を聞いて何もしないなんて事だけは絶対にあり得ないからな。
だからエレノアの大事にしてたアクセサリをちゃんと直してあげて、それでエレノアに誠心誠意を込めてしっかりと謝っていこう。それで謝罪を拒否されてしまったら、その時はまた違う方法を考えていく事にしよう。
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