第3話:エレノア・クロフォール
大ヒットした名作ゲーム『ルミナス・ファンタジア』は心優しい王子が主人公となって世界各地を旅しながら、悪い奴らをどんどんと打ち倒して困ってる人々を助けていくという王道のファンタジーゲームだ。
そしてこのゲームで一番最初に登場するボスキャラが俺ことアレン・クロフォールだ。以前も言ったように領地に住んでる人々を圧政で苦しめている典型的な悪役貴族だ。
アレンは一番最初に戦うボスキャラなのでチュートリアル的な要素もあり、主人公の師匠キャラが戦い方の指南しながらボスキャラである俺を倒していくという流れだ。
(だからゲーム本編での俺は登場してすぐに主人公にやられてしまうという残念過ぎる悪役なんだよなぁ……)
それで俺を倒した後、主人公は世界各地を旅して悪い奴らをどんどんと倒していき、本編のラスボスである邪龍を倒すとエンディングを迎える事になる。
そしてそのエンディングを迎えた後で始まる隠しシナリオでボスとなるのが厄災の魔女ことエレノア・クロフォールだった。
ゲームに登場するエレノアは綺麗な漆黒のロングヘアとスレンダーな身体、美しい美貌を併せ持つ物凄い綺麗な女性だった。今さっきの子供のエレノアが大人になったらまんま同じになると思う。性格は非常に優しい温厚な女性だった。
でもそんな美しくて優しい温厚なエレノアには壮絶な過去を持っているんだ。
実はエレノアは幼少の頃、一人で買い物をするため街の中を歩いている時に人攫いの賊に捕まってしまい、そのまま奴隷商に売り払われてしまうんだ。
それからエレノアは色々な人々に買われていき、毎日のように酷い人体実験を受け続けられて来たんだ。そのせいでエレノアの心と身体はどんどんと壊れてしまったんだ……。
そしてそんな酷い人体実験を受け続けていったとある日、エレノアは偶然にもその当時自分を購入していた貴族を殺めてしまう事になるんだ。
それがエレノアにとっての初めての殺人だった。でもエレノアは初めて人を殺めてしまった事に対して心を痛める事はなく……。
―― あぁ、そうだったんだ……人間って……こんなにも弱い生物だったんだ……そっかそっか……ふふ、こんなにも弱い生物だったのなら……もう我慢する必要なんてないじゃない……ふふ、ふふふふふふふふ……
そう言いながらエレノアの心はこれで完全に崩壊してしまい、それから今までエレノアに危害を加えてきた人間たちを探し出して全員古代魔法で惨殺しまくるようになるんだ。
そしてそのエレノアの古代魔法による殺害現場を偶然にも主人公が目撃してしまい、主人公たちは厄災の魔女ことエレノア・クロフォールを討伐する事になる……というのが隠しシナリオの流れだ。
この隠しシナリオを全部プレイしたらわかるんだけど……こんなのエレノアが闇堕ちして当然じゃんって気持ちになるし、でもここまで全世界に甚大な被害を沢山生み出しちゃったのなら、もうエレノアにとっては死しか救済がないじゃん……ってなるくらい悲しい話だった。
しかもゲーム内でエレノアと最初に出会った時はとても優しくて素敵な淑女のような立ち振る舞いをしてたのに、終盤までプレイしていくと完全にエレノアの心をぶっ壊れているのがわかっていき、さらに闇堕ちしてる姿も見せてくるので、何だかその様子も相まって色々と悲しくなるシナリオだったな……。
(だからこの世界でもエレノアが闇堕ちしてしまって、それで世界滅亡の脅威になってしまうなんて未来は防がなきゃならないよな……)
だってせっかく俺が真面目に生まれ変わろうと頑張っているのに、それなのに義妹が闇堕ちしてこの世界を滅亡しようとしだしたら困るからな。そんな混沌とした世界になったら厄災の魔女の兄貴というだけで俺も絶対にヤバイ目に遭うに決まってる。
(それにこれは俺自身のためだけではなくて……エレノア自身のためにも闇堕ちは防がなきゃだよな……)
さっきから言ってるようにエレノアはとても悲しい過去を持っているボスなんだ。でもゲームではエレノアは完全なる悪役だから救う事は決して出来なかったんだ。
でも本当ならそんな悲しい過去を持つエレノアの事を助けてあげたかった……と、ルミナス・ファンタジアをプレイした事のあるヤツなら皆そう思ったはずだ。当然俺もそう思った。
(だからこの世界ならエレノアを救える可能性が十分あるんだから、それなら俺がエレノアが闇堕ちしないように全力で守ってあげよう!)
という事で俺は兄貴としてエレノアを闇堕フラグから全力で守ってあげる事を決意をしていった。これから色々と頑張らなきゃだな。
だからそのためにもまずはエレノアと仲良くなりたいんだけど、だけどここまで拒絶されちゃってるとちょっと厳しいよなぁ……。
(でもそもそもの話なんだけどさ……なんで俺ってここまでエレノアに嫌われているんだろ?)
今までクソガキだったからエレノアにも迷惑をかけてしまったんだと思うけど……でもあそこまで拒絶されてしまうなんて、もしかして迷惑以上の事をエレノアにやらかしちゃったのか?
まだ今までの記憶を全部思い出せてる訳じゃないから、そこら辺については全然わからないけど……まぁでもしっかりと話し合えばきっとエレノアも俺が生まれ変わったと理解してくれるはずよな。
だからエレノアにちゃんと信頼して貰えるようになるためにも、これからもエレノアには毎日誠心誠意を込めて沢山話しかけていってみよう!
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