第25話 勝負の行方
「おっとー!ヴィジ選手単独で撃破ーー!!なんだ今の技はー!!
さぁ、そして決勝を賭けた最後の大勝負。対戦カードは、謙譲の階層『ザイオン軍代表』vs
目の離せない展開に会場は大盛り上がりだ。
「さて、どうなるかな...」
ミルも勝負の行方を見守る。
「さぁて、誰が持ってるのかなぁ?」
一方対峙した両者はにらみ合っている。ヴィジが動けない今、ザイオン軍代表が人数有利だ。
「こうなりゃ一斉攻撃よ。雷魔法。」〈
「俺達もいくぞ!」〈雷撃〉
空気が裂けるような轟音とともに、黄色と青白い稲妻が交錯した。それを見て、双方は交戦を開始する。
「ミカ達もいくんだよ。
「うぉ!?」
突如地面から黒い触手が生えてきて4人を拘束する。そして、
「よしっ。」〈マルチソード〉
と、ゼノシュが無数の剣を飛ばしてくる。それに対し、
「任せて!」〈
と、サイコキネシスで剣を止め、打ち返した。
「うわっ!!」
剣はミカ達めがけて飛んでいき、拘束から解放される。
「こっちも反撃だ!!」
「炎魔法...」
しかし、レイとウェントが反撃に出ようとした瞬間、身体が動かなくなってしまった。
能力も使えない。
「なっ!?」
「なんだ...まさか!?」
「あなたの仕業ね!」〈神ノ力〉
その知らない能力の正体に気づいたネリンが、木の後ろに隠れていたシルムを表に引っ張り出してきた。
「きゃぁ!!」
「あの子の能力...ネリンみたいにただ動きを止めるだけじゃなくて、能力も使えなくしてくるぞ。力づくて振り切れるけど厄介だ。」
「触手に糸に...サポート系が多すぎて戦いづらい。誰が魔水晶を持ってるんだ?」
そんなことを話していると、
「さぁ、まだまだいくよ!」
と、サーガが糸で木を引き抜いて攻撃してくる。
「物理攻撃なら任せて!」
ネリンも負けずに大量の木を引き抜いて、相手に投げ飛ばす。
ドドンっと土煙が舞い、戦場は混戦状態だ。
「黒喰魔法。」〈
「炎魔法。」〈
振り回してくる触手をウェントが焼き切る。
〈
ゾーンがどんどん狭まる中、互いに一歩も引かず、むしろヒートアップしていくカオス状態になっていっている。
相手はサポートが多い分、近接戦闘には向かず、零階層組は人数不利を何とか持ちこたえていた。
「もう少しだ...」
レイは静かにそう告げる。
全員の体力がなくなってきた最終盤。魔水晶を持っているフラクタとシルム以外はゾーンを出入りしながら戦闘を続ける。
そして、ゾーン収縮残り10秒を切ったその時、
「いまだぁーー!!」
と、レイが合図を出した。その瞬間、4人が一斉に能力を使う。
〈
「くらえ!合体技ァ!!」〈〈風神〉〉
「うわぁーー!?」
「きゃぁーー!?」
地面をえぐり飛ばす程の強烈な爆風が、ザイオン軍代表の全員を安地外に吹き飛ばした。
「くそっ...だが、魔水晶は大丈夫だな。」
「今のが切り札...?」
飛ばされた5人がそんなことを考えていると、
〈
と、後ろからヴィジが5人を拘束した。
「なにっ!?」
「しまった!!ヴィジくんの存在を忘れてたんだよ。」
「ち、力が入らない...」
そして、5人が動けないことを確認すると、
「みんな、逃げろーー!!」
と、大声で叫んだ。
それを聞いたレイ達は、了解!っと森の奥に走って逃げていった。
「ま、まさか!?まずい!!」
「やられた!!」
ゼノシュ達はようやく状況を理解する。
ゾーン内では魔水晶は10秒で崩壊すること。だが気づいた時にはもう遅く、安地は完全になくなってしまった。
つまり、先にゾーンに出されたゼノシュ達に残された道は、崩壊までに残された5秒弱で相手の魔水晶を割ることのみ。
しかしそれはもう不可能に近い。これは――。
「俺達の負け...か。」
ゼノシュ達は戦意喪失し、その場に倒れ込む。
そして、パリンっとシルムの持っていた魔水晶が崩壊し、試合終了のサイレンが響き渡った。
「な、なんとーー、第二試合目の勝者はミル軍代表だぁーー!!」
「これはなんという大番狂わせでしょう!!ルミナ感動しちゃいましたぁ!!」
ほとんどが『
そんな中、試合から戻ってきたヴィジ達は仮眠室で休憩している。
「みんなお疲れさん!いやぁ〜、素晴らしすぎてお兄さん感動しちゃったよ。俺の想像を超えてくるなんて大したものだなぁ。ほれ、ジュース買ってきたぞ。」
ベッドに座って試合の反省会をやっていると、ミルが中に入ってきた。
「ありがとうございます!!」
「体の調子はどうだ?特にヴィジ。お前はかなり消耗しただろう。」
「はい、回復班の人達のおかげですっかり元気ですよ。
「そうか...今から第三試合で、そんでその後昼休憩を挟んで決勝だから、ギリ間に合うな。しっかりコンディション整えとけよ。」
「「はい!!」」
――そして昼休憩も終わり、決勝に勝ち残った選手たちは中央に集まる。
「さぁ、お待たせしました!本日の目玉、バトロワ決勝です!!」
「決勝に出場する選手は――、
嫉妬の階層『ラプラス軍代表』、零の階層『ミル軍代表』、忍耐の階層『インペル軍代表』。
そして見事、敗者内総合ポイント1位に輝いた、暴食の階層『ジェスト軍代表』の4チームです!!」
選手の紹介がされ、会場から拍手が起きる。
「インペル軍...
「あのミル様と仲が悪いっていう...」
「嫌な予感がするわね。」
そんな話をしていると、1つのチームが近づいてきた。
「おいおい、こんなところにバグがいるぞ。ここで殺してやろうか。」
悪い予感は当たり、案の定インペル軍代表チームのリーダーらしき男が罵ってきた。
(こんなに典型的な悪キャラっているんだな。)
あまりに典型的な態度にヴィジは少し関心した。
「おいお前、うちのチームメイトにその言い草はなんだ。決勝まで待てないのか?」
「そうよ、ヴィジくんはバクなんかじゃないわ。
レイとフラクタが反論をする。
「ふん、ミルとかいう異分子を崇拝する邪教徒が。やつが唯一の例外だと思っていたが、今消しといた方が吉だな。」
そう言うと攻撃態勢をとった。
天界の第三階層ではかなり反ミル軍の教育がされているようだ。
「バカ!?こんな所で争ったら運営に殺されるぞ!!」
そんな話をしていると、魔水晶などを配るため運営がやってきた。
「ちっ、まぁいい。後で楽しみにしておけ。」
そう言うと、その場から立ち去って行った。
「ヴィジ、大丈夫か?」
「全然平気だよ、慣れてるから。」
ヴィジは大丈夫だと笑ってみせる。
「俺らの主君とチームメイトをバカにしたあのクソ野郎達にはぜってぇに勝たないと行けないな。」
「同感だレイ。」
レイ達は余計に火がついたようだ。
「にしてもアイツ...あの傲慢な態度。天界第三階層の大貴族、『ペイシェン家』の次男だな。」
「「ペイシェン家?」」
ウェントの言葉にみんなはハテナを浮かべる。
「ほら、最近大変だったじゃないか。『カタルシア=ペイシェン』の大魔法で。」
その名前にみんなは、あぁ!!と
「そういえばそんな名前だったな。」
「アイツは大魔法使いカタルシアの子孫、フローズ=ペイシェンだ。有名な氷魔法の使い手だよ。」
「相当手強そうだな。予選をちゃんと見てない分、厳しい戦いになりそうだ。」
「まぁ、作戦通りに行けば大丈夫よ!」
さて、5人が話してるうちに準備が整い扉が開く。
「いよいよだね。」
「よし、勝つぞ!!」
そして5人は覚悟を決め、勝利に向けての一歩を踏み出した。
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