第7話 出口 昇太 (でぐち ショウタ)②
村の中を進むにつれ、赤い子供の手形が目につくようになった。壁、窓、地面、木の幹に、一つ、また一つと増えていく。誰かが「気持ち悪い」と
途中、古びた井戸があった。
公民館に着いたとき、オレは妙な感覚に襲われた。誰かがオレ達を見ている。いや、誰かがオレ達の中にいる。そんな感覚だった。背筋がぞわりとし、思わず振り返ったが、誰もいなかった。ただ、キョウの顔がどこか違って見えた。目の奥が、まるで別人のように冷たかった。
館内には、人形が置かれていた。奇妙な造形。白い顔、大きな瞳。
公民館を出て車に戻る帰り道、オレは一人で歩いていたような気がする。実際には他の四人と一緒だったが、少し距離を置いて後ろを歩いていた。
オレは声をかけた。小さく、はっきりと聞こえるように。「おい」だったか「待てよ」だったか、思い出せない。
しかし誰も振り返らなかった。返事もなかった。そのとき、オレだけが立ち止まっていたことに気づいた。オレだけが、後ろを振り返っていた。だから、オレしか見ていない。そう言い切ることができる。だから、見間違いだったとも言える。そういうことにしておくことも可能だ。
公民館の
そこに白い顔があった。
巨大な顔だった。穴の
その顔は、ミサが抱えていた人形に似ていた。両腕で大事そうに抱えていた、あの人形。薄い皮膚で病的に白く、瞳だけが大きくて。その顔が、穴の中にあった。目は
もう、顔はなかった。ぽっかりと大きな穴があるっきりだった。
だから、他の四人は、何も見ていない。だから、オレしか見ていない。だから、見間違いだったかもしれない。そういうことにしておくしかなかった。
(続く)
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