ママ、リラックスできた?
めんだCoda
第1話
「じゃあ、ママ一旦外に出るからね!お迎えの時間までには戻ってくるからね!あっ、ほら、水筒!忘れずにね!また、あとでね!」
「うん、わかった〜」
「それでは、先生よろしくお願いします。時間までには戻りますので…」
「はーい!大丈夫ですよ!いってらっしゃ〜い!」
5歳の息子を、習い事の教室において出ていく私。
普段、習い事の1時間の間、一旦家に戻り残った洗い物など家事をする。
もしくは、下の子を連れてお教室の中に入り、終わるまで習い事の様子をタブレットで見ていたり。
でも、あるとき、子どもの悩み事を先生にふと相談したとき、先生から言われた。
「お母さん、真面目ですね。ここに預けているときは、1人でカフェ行ったり、どこかで休憩したり、好きにしていいんですよ。ここにベッタリついていなくても、大丈夫ですから」
先生の言葉に救われたと同時に、そうか、この時間、少しだけでも自分の時間に当てていいんだ、と妙に腑に落ちた。
それで、今日は初めての1人カフェを試みることにした。
まずは、カフェ探しから。
スマホで近くのカフェを検索する。
習い事を初めて半年以上経つのに、カフェ1つ場所を知らない。
お教室裏手に見つけたけれど、駐輪場がないからやめて。
近くにファミレスがあるから、そこに行こう!と思って、大きい道路の横断歩道を走り出した。
こちらの横断歩道は青だけれど、誰も渡っていないからか、車がけっこうな速度でビュンビュン横断歩道を横切っていく。
あっ!!危ない!!!
横断歩道を走る私の横、数十cmの所で黒い車が急ブレーキをかけた。
私が渡っているのに気づかなかったみたいで、私は危なく引かれるところだった。
車に乗っている女性と男の子は、車内で固まっていた。
私は心臓がバクバクして動揺しながらも、近くのファミレスに着いた。
適当にデザートを頼んで、迎えまでの時間、自分の小説作成の時間にあてて。
集中していて気付いたら、迎えの時間10分前!
急いでファミレスを出て、教室に向かう。
教室に着くと、ニコニコした息子と先生が楽しそうに今日したことを教えてくれた。
また来週ね〜!
先生の言葉に、息子も笑顔で頷いて、私は先生に挨拶をして、息子と教室を出て、
2人で笑顔で話しながら自転車に乗る。
そんなとき、自転車の後ろに乗った息子が、ふと言ってきた。
「ママ、今日どこに行ってたの?楽しかった?」
普段なら、私が教室にいなくてもそんなこと聞かないのに、なんで今日に限ってそんなこと…?
「カフェとか行ったの?リラックスできた?」
えっ、なんでそんなピンポイントに?!
私、誰にも何も言ってないのに。
息子の勘ってやつなのか!?
動揺して息子の顔を見ると、もう笑顔はなくなっていて、なんだか寂しそうだった。
「…ママ、ちょっと創作作業に時間当てちゃった。おかげでやりたいことできたよ、ありがとね、でも、ごめんね」
そう答えたら、ふーん、とだけ言ってた。
なんとなく、次はもうカフェとか行くのやめようって思った。
だって、
車に轢かれそうになるし、子どもには寂しそうな顔されるし。
神様を信じるわけじゃないけど、なんか、
そうじゃないんじゃない?っていわれた気がした。
真面目かもしれないけど、また来週からはその1時間を自分以外のことに使うことにするわぁ…。
でも、
1人カフェ、6年ぶりで楽しかった。
ママ、リラックスできた? めんだCoda @syala
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