G

「お待たせ」


 その声が、待たせている友人の背中を振り向かせる。

 彼女は笑顔を見せてぼくの方を見る。読書をしていたのだろうか。一冊の文庫本を手提げの鞄にしまう。


 何を読んでいたの? 

と聞いてみても良かったけど、少し元気がなさそうなので止めておく。その内容に踏み込むのが彼女の居場所を踏み荒らすみたいで良くないと思ったのだ。


 待ち合わせの公園は郊外住宅地の地区にあるそこそこ広いところだ。周囲を歩いたら30分はかかるだろう。散歩道に沿って植えられた木々はまだ色付いてはいない。ようやっと夏の暑さが引いて、これから始まる季節を感じさせるようだ。

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