親友からの恋愛相談〜謎解きメッセージ〜

平 遊

一番 大事

 彼女にこっぴどく叱られた親友が、破局の危機だと、彼女との共通の親友である俺に泣きついてきた。ちなみにこの少し前に、俺は彼女の方にも泣きつかれているんだけどね。


「どうしよう、俺、このままじゃ振られるっ!」


 彼女の方と全く同じこと言ってらぁ。

 なんて言えるはずもなく、テキトーに返事をする。


「え? まさか」

「ほんとだよ! 見るか、これ!」


 親友はスマホを出し、彼女とのメッセージのやり取りを俺に見せる。


 ――だからいつも言ってるのに!

『謝ってるじゃないか!』

 ――いつもいつもそうやって!

『いい加減しつこいっ』

 ――すぐそうやって逆ギレしてさ

『してないよ、逆ギレなんて!』

 ――キレる人、やだ

『ていうか、キレてないし』

 ――よく言うよ

『待てよ、なんで俺、キレキャラ!?』

(既読スルー)

『スルーすんな!』


 さっきも同じやり取り見せられたんだけど……何なんだよ、こいつら。正気か?


「これのどこが、破局の危機だって?」


 流石にうんざりした声が出てしまっても、許して欲しいというものだ。けれども、親友は訳が分からないという表情で俺を見る。

 仕方がないので、彼女のメッセージの一番初めの文字だけを指でなぞってやると……


「マジかっ!?」


 素っ頓狂な声を上げて暫く放心状態になった後、


「悪い! 俺、彼女のとこ行ってくるわ!」


 そう言って走り出そうとするから、慌てて引き留めて言ってやった。

 ついさっき、彼女の方も、「彼のとこ行ってくる!」って飛んでったばっかだからさ。


「とりあえず、電話してみろ。行き違いになっるかもしれないぞ」


 飛び跳ねんばかりに駆けて行く親友の後ろ姿に、ため息をひとつ。


 なんだあのメッセージのやりとり。

 俺には惚気にしか見えねぇんだけと。

 

 気づいて教えてやった俺に、感謝しろよ?

 つーか。

 お互い気づかないって……ありえねぇからなっ!


【終】

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