第13話  恋の誤送信、取り消せません!


夜10時。仕事終わりにベッドへ倒れ込みながら、私は親友にLINEを送った。


「マジで今日の上司、顔はイケメンなのに性格クソすぎて草」


送信。……したつもりが、次の瞬間。


――宛先:課長(=上司本人)


「ぎゃああああ!!」


慌てて削除ボタンを押したが、時すでに遅し。

画面には無情にも「既読1」の文字。


布団の中で転げ回っていたら、すぐに返信が来た。


『顔はイケメンってとこは評価する』


……え?そこ?

私は頭を抱えながらも、必死に取り繕った。


「すみません!あの、これは誤送信で……!」


数秒後、再び通知が鳴る。


『じゃあ補足して。性格クソってどのへん?』


まさかの自虐的追撃。

私は震える指で返信した。


「……いちいち細かい。仕事は完璧だけど、怖いです」


すると、すぐ返ってきた。


『正直でよろしい。じゃあ今度、怖くない俺を見せてやる』


「え、どういうことですか?」


『飯でも行こう。部下に優しい課長編、解禁』


笑いながら、顔が熱くなるのを感じた。

誤送信からデートに発展するなんて、誰が想像しただろう。


数日後。居酒屋で会った課長は、驚くほど“普通の人”だった。

気さくに笑い、くだらない話で盛り上がる。

あの“クソ性格上司”とは別人みたいに。


帰り道。駅のホームで、彼がぼそっと言った。


「……誤送信、ちょっと嬉しかったんだ。

本音じゃなきゃ聞けなかったから」


その不器用な笑顔に、思わず吹き出す。


「じゃあ次は、“好き”って誤送信してみます?」


冗談っぽく言ったけど――

彼の耳が真っ赤になったのを、私は見逃さなかった。



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