#19 極楽ナイトプール
「さぁ、試練よ!」
女王の声とともに、たぬまりたちはナイトプールフロアへと足を踏み入れた。
その瞬間、何もなかったタイルの床に魔法陣が浮かび上がる。淡い光が足元を包み、次の瞬間——
「……え?」
たぬまりは自分の姿を見下ろした。
水着だった。
モモは白を基調としたハイウエストのビキニ。
胸元で軽く結ばれたトップに、肩から腕にかけては透け感のあるシフォンのフリルスリーブがふわりと広がっている。
エルフ耳と相まって、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
サキは黒のホルターネック型ワンピース。
胸元から腹部にかけて大胆なカットが施され、引き締まった体躯にぴたりと馴染んでいた。
その姿は、鎧を脱いでもなお威厳を放っていた。
ひがちーは水色と白のチェック柄セットアップ。
パフスリーブ付きのクロップトップに、フリルのついたスカート風ボトム。
髪型はツインテールにされ、褐色の肌に八重歯が映えて、まるで“夏の召喚士”のような存在感。
たぬまりは紺のツーピース。
クロスしたラップデザインのトップに、ふわりとしたシースルーのパフスリーブ。
シースルー生地はところどころきらめいており、夜空のよう。
ボトムはサイドリボン付きで、夢見がちな雰囲気を漂わせていた。
そして女王は、深紅とバーガンディの艶やかなセットアップ。
花のレースがあしらわれたトップとハイレグボトムに、透け感のあるショールをふわりと羽織っていた。
まさに“夜の蝶”のような妖艶さと気品を併せ持つ装いだった。
「サキちゃん、絶句してる」
「見た目だけじゃなくて、装備が封印されてるー!ステータスも変わってる!」
ひがちーがちゃっかり状況を確認していた。
女王はたぬまりの手を取ると、ナイトプールの奥へと歩き出す。
「VIPルームにたどり着くのが、あなたたちへの試練よ♡」
「おい待て!」
遠征組が追いかけようとした瞬間、プールの水面が揺れ、マモノが姿を現した。
ナイトプールは、幻想的な光に包まれていた。
水面には蓮の花のような光の装飾が浮かび、壁には水晶のような柱が並ぶ。
マモノたちは、きらびやかな姿でうろうろしていた。
ビキニのクラゲ型マモノ、浮き輪を巻いたカニ型マモノ、泡を吐くイルカ型マモノ——
どれも見た目は可愛いが、目つきは鋭い。
「意外と面白いかも」
「腕が鳴るね」
「こういう裸縛りの試練、昔のゲームでやったことある」
「水着は着てるぞ」
遠征組は軽口を叩きながら、戦闘態勢に入る。
空気が変わる。血が滾る。
サキは、プールサイドに置かれていたビーチパラソルの支柱を抜き、槍のように構える。
モモは、プールの水を魔法で操り、水流を作ってマモノの足元を崩す。
ひがちーは、飲み物を載せていた銀のトレイを手に取り、くるりと回して構えた。
トレイは意外なほど重く、反射光が鋭い。
ひがちーはそれを盾のように使いながら、マモノの攻撃を受け止め、跳ね返す。
「サキちゃん、右!」
「任せて!」
サキの支柱が一閃し、クラゲ型マモノを吹き飛ばす。
ひがちーはトレイを回転させてカニ型マモノの甲羅を叩き割り、モモはイルカ型マモノを水流で押し流す。
「連携、完璧!」
「よっしゃ、次ー!」
一方、VIPルーム。
全面ガラス張りの空間には、ジャグジーとソファ、テーブルが並ぶ。
天井には星のような光が揺れ、床にはふかふかの絨毯。
果実を盛りつけた冷たいドリンクが並び、空気は甘く、静かだった。
たぬまりはジャグジーに浸かっていた。
女王は淵に腰かけ、たぬまりの頭を自分の太ももで挟むようにして支えて髪を梳くように撫でている。
「……めっちゃいい生活かもしれない」
スキンシップは過剰だが、快適すぎて思考が溶けそうだった。
うっすらVIPルームの中が見える。
たぬまりは、ジャグジーで女王に抱かれながら、果実入りのドリンクを飲んでいた。
「あのさ……たぬまり、めっちゃ寛いでない?」
モモがカッと目を見開き、耳と顔を赤らめながら叫ぶ。
「あの体勢ドスケベすぎませんか!?結婚ですか!?」
「モモ落ち着け」
「もちつけー」
「よし、休憩終わり。残りは一気に行くぞ!」
その瞬間、3人の空気が変わる。
サキは、支柱を回転させてマモノの群れを一掃。
ひがちーは、トレイをブーメランのように投げて、複数体を同時に撃破。
モモは、水流を操って敵の動きを封じ、サキの一撃に繋げる。
「左、カニ型!」
「了解!」
「イルカ、後ろから来てる!」
「水流、強化!」
連携は完璧だった。
マモノたちは次々と蹴散らされ、プールは静けさを取り戻す。
VIPルームの扉が、バーンと開いた。
「試練クリア、ね。おめでとう」
女王はグラスを傾けながら言った。
しかし、ツーンとそっぽを向いて、たぬまりを離さない。
「約束でしょ?」
たぬまりが静かに言うと、女王はしぶしぶ腕をほどいた。
「……あーあ、しょうがない。夢の世界は終わりよ。元の場所へおかえりなさい」
周囲の景色が歪み、淡く光り始める。
目の前が真っ白になり——
光の中で、女王がたぬまりに何かを呟いて、笑っていた。
気がつくと、たぬまりたちは霧の街ミズノハの入口に立っていた。
水着姿のままで。
「うわーーー!!」
「なんでだよ!」
「こんな姿で街に入れるか!」
「ハレンチです!」
「よく見たら時間で解けるデバフだこれ!」
試練を突破したと思ったらこの仕打ちである。
イタズラ好きの妖精女王らしい終わりであった。
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