君の笑顔が、僕の季節になる
フリスク
第0章 プロローグ :夢のエレン
あの頃、世界はもっと穏やかで、
午後の光さえ、永遠に続くものだと思っていた。
図書館の隅で、ページをめくる指先。
風がカーテンを揺らすたびに、彼女の髪がきらめいた。
エリックは、彼女の横顔をよく覚えている。
まっすぐで、笑うと少しだけ恥ずかしそうに目をそらした。
名を呼ぶ勇気もなく、ただ、同じ時間を過ごすことが
幸せのすべてだった。
けれど、季節は残酷なほど早く過ぎ去り、
気づいたときには、もう彼女はいなかった。
理由も、さよならの言葉もないままに。
それから何年も経った今でも、
ふとした瞬間に、彼は彼女の笑顔を思い出す。
研究ノートの余白に書きかけた数式の隙間、
試薬瓶のガラス越しに揺れる光の中。
――ねぇ、エレン。
もし、あのとき言葉を選べたなら、
僕たちは何か違う未来に辿り着けたのかな。
彼は、答えのない問いを胸に抱えたまま、
それでも前を向いて生きてきた。
そして、新しい春の日、
彼女とは違う誰かが、再び彼の前に現れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます