抜け目だらけの機巧騎士は救世への道を征く ~拝啓父ちゃん母ちゃん、異世界を元気にジェットホバーで駆け回ってますので心配しないでください~

猫熊太郎

開幕の人形劇


 大地に穿うがたれた大小様々な傷跡のような峡谷クレバス

 そこから噴き出す強い毒性をもった青紫色のガスは、視界をさえぎるに飽き足らず、居つくもの全てをもむしばみ、内へとみ込んでいく。

 草一つ生えていない荒野と切り立った崖。暗褐色の土と岩々だけの素材で成り立つ荒涼とした単調モノクロの世界。

 そこに上塗りするかのよう、青紫のもやが立ち込めている。 

 それが〈地の果て〉と呼ばれるゾルンの様相であった。


 その中に、他とは格別された異様さをかもす古城が一つ。

 焼け焦げたように黒々とした煉瓦れんがで統一された建築物。それはこの生命の営みなど感じられない無機質な世界にあってなお、どこまでも冷え切った印象を与える。

 ――と瞬間、その古城の一部がぜた。

 鮮やかな紅蓮ぐれんの光を瞬かせ、黒ずんだ煉瓦の壁が吹き飛んだ。

 静的スタティックなこの世界には似つかわしくない轟音と、飛び散る煉瓦の破片。それらと共に城の外へと吐き出される影が二つ。

 はじめに、黄金の暖かとすら取れる色合いの光をまとった細身の甲冑かっちゅう騎士が一人。城の内から外へと放り出されるように吹き飛ばされ、翻筋斗もんどりをうちながら――しかし地を足で捉えて着地を果たす。

 その後を追うように、同じく全身を余す事なく鉄色をした装甲鎧で固めた巨躯きょくの騎士が一人。こちらは泰然とすら呼べる身の動きで、崩れては土石流のように押し流されていく城壁の破片の中をしっかと進み出る。

「よくぞここまで辿たどり着いた、聖騎士ガレリアよ」

 ひどかすれているような声で、巨躯の騎士が向かい合う相手にそのくぐもった声を漏らす。

「――だまれ! 国を裏切り、神々の使命に背き、今はもはや人である事をすら止めた悪鬼めが」

 朗とした高い声で、その相手が言葉を返した。

 光燐こうりんを帯びたと表現できるその黄金の甲冑騎士は、大樹の如き威厳さで立ちのぞんでいる巨人へと抜き放った白刃を隙なく構えている。

「神々の威光の下、そして正義の名の下に、魔鋼まこうの王アラン・マグフィよ――この場で貴様を討つ!」

「神々、正義か……」

 黄金鎧の騎士が剣の刀身をてのひらでなぞりながら、小さく何事かの術言じゅっごんを呟いた。

 するとその細緻な装飾を施された美麗な長剣が、見る間に白緑びゃくろくの光で覆われていく。

 にじんだような光がその刀身を余す事なく包む。

 黄金騎士はそれを振りかぶり、まだ大分距離のあるはずの相手へ向かって剣を垂直に打ち下ろした。

 剣を包んでいた光――それが光波となって飛翔する。

 鴻大こうだいな光のエネルギー体となったそれがまばゆい輝きを引き連れて漆黒騎士の許へと瞬きのあわいに至る。

 しかし相手は、向かって来る光に対して避けるどころか何の身動みじろぎすらしない。

 稲光を髣髴ほうふつとさせる光と音、それが奔流となって大騎士を含めた城塞の壁を穿うがつ。

 光の中に宿っていた膨大な熱量が空気すらも焼き焦がしながら去った後、果たして漆黒の大騎士は何事もなく立っていた。

められたものだ。こんな目晦めくらまし程度の技で我を討つと言うか」

「――ならば直接叩き込むまで!」

 黄金騎士が再び剣に白緑の光を宿し、しかし今度はそれを両手で掲げて地を蹴った。不動のような相手に向かって一直線に踊り出た。

 だが今度は相手もただたたずむだけではない。

 暗色の巨兵はその背中に携えていたいびつな形状の大斧たいふを片手で引き掴むと、一直線に迫り来る光の騎士を迎え撃つべく自らも踏み込む。

 もはやそれは地を蹴ったと呼べる代物ではない、爆発――そう表現できるもの。巨人の騎士が足を踏み込んだ地面が爆ぜていた。

 凄まじいまでの勢いで以って、呼吸のいとまもなく相手に肉薄する。

 その圧倒的な速度と質量で眼前へと至った相手に黄金騎士は仰天の心内。自身が一歩を踏み出して後、まだ二歩目をも地面に付けていない合間の出来事だ。

 それでも無防備な状態の自身と、今まさにその大斧を打ち上げようと腰の後ろで下段に構えている相手との、初動におけるの悪さは瞬時に覚える。

 一直線に突進していた軌道を急転、二歩目の足を地に着けた瞬間に身を投げ出すよう大きく横合いに飛び退いていた。

 その残滓ざんしを刈り取るかのよう、直前まで細身の騎士がいた空間を肉厚な大斧が大気を割らんばかりに斬り裂く。

 地面から天空へと、斧の軌道は真っすぐだ。

 長柄ながえの大斧、その柄を短く握っている。遠心の違いで重量のある武器とは思えぬ意表を突く速度の攻撃法方を可能とした。

 瞬時に相手の懐に潜り込む超加速と相成った電光石火の一閃。

 ――即ち、奇襲。

 この一連の手管てくだだけでこの漆黒の大騎士が図体だけではない百戦ひゃくせん錬磨れんまの武人である事が知れる。

 しかし、大騎士の攻撃の手はそれだけに止まらない。

 斧を振り上げた瞬間、大騎士は握っていた柄をわずかに緩めていた。慣性の法則によりその柄は上空へと伸びていき、まるで掌からすり抜けると思われる絶妙なそのタイミングで再び強く握りこむ。――ほぼ柄頭の位置、刃と対極の位置を瞬時に捕らえている。

 得物の到達範囲リーチを攻撃後の動作にて切り替えていた。

 先程は初速を重視するため、長い柄の利点をまるで活かさず切り詰めるよう運用し、今度はその大斧の攻撃範囲を余す事なく発揮するよう――横合いに飛び退いて体勢を乱している相手に向け豪雷の如く天から振り降ろした。

 二度、意表を突かれた黄金騎士。

 声にならないような叫喚きょうかんを空気と共に呑み込み、それでも剣を構えて相手の凄まじい威力の斬撃に対応していた。

 甲高い衝撃音と金属と金属を擦り合わせる不快な音が響く。

 その音圧にすらえられないという風に、黄金の騎士は容易く弾き飛ばされる。

 体格による膂力りょりょくの違い――それを見越したとしても漆黒騎士の力は人智の及ばぬほどだ。その細身の剣がし折れなかっただけでも幸いである。

「ガレリアよ、聖騎士の象徴たる〈アルコンのいくさよろい〉を受け継いだとてその程度の腕ではな……父、アストールの天質が惜しまれる」

「貴様が父を語るな!」

 激情をその声に宿らせて、黄金の騎士は地に膝をつけたまま相手をにらみ上げる。

「その薄汚れた口で、裏切り者の貴様が……父を……父を殺した張本人である貴様が!」

「どのような弁明もするつもりはない。しかし、今でも奴――アストールとは盟友であるつもりだ」

「――ほざくなッ‼」

 地に這いつくばる黄金騎士が一転、喊声かんせいと共に再び一直線に駆け出していた。

 俊敏しゅんびんな足取りで相手との距離を詰める合間、またもや剣に術言を込めて白緑の炎を宿した。

 そして裂帛れっぱくの声を剣にも乗せて振りし切る。上段から袈裟斬りに、黄金騎士の剣が弧を描く軌跡を辿たどる。

 しかし相手は無造作に斧を反転させる要領でその直線的な攻撃をなした。

 大騎士の方は微動だにしない。打ち払われた黄金騎士の姿勢だけがまたも揺らぐ。

 だがむしろその反動を柔軟に利用するかのごとく、弾かれる身体の勢いには逆らわず、ただ転身して再び別の角度から斬り掛かる。

 それをすら何の感慨も抱かぬ体で、黒騎士はただ幅広な刃を盾のように用いて防ぎ続ける。そして、尚も容易く弾かれるその斬撃を――それでも躊躇ためらわずに打ち込み続ける黄金騎士。

 斬り結ぶと言うにはあまりに一方的な攻防、しかしそれが何合も続いた。

 黄金騎士の剣に宿った眩い燐光は、打ち合わす度に互いの武器の破片と共にはかなくその場に散逸していく。

 そんな夢幻むげんのような光と剣戟けんげきの音だけが、この荒涼とした地をわびしく彩るのだ。

「未熟な――」

 構えも取らぬ体勢から黒騎士は軸足を広げて拳を突き出す。

 あまりに単調なその攻撃――身を退き、余裕をもってかわしたつもりの黄金騎士。

 だが直後、相手のその手甲から紅蓮ぐれんの光が漏れたのを察知する。

 瞬く勢いで身をよじるが、そこから放射状に発せられた爆炎から逃れる術はなかった。

 爆風のあおりをもろに喰らって、地面を何度も横転しながら峡谷の傾斜を滑り落ちていく。

 底の知れぬ昏冥こんめいへと吸い込まれそうになる身体を直前にて立て直し、黄金騎士は剣を杖にして身を起こした。

 見下ろすように大きな影が崖のふちへと姿を現す。

 しかし意想外な事に、その影は見下ろした相手の輪郭を捉えるやまるで動揺した声を漏らす。

 巨人が戸惑うように見つめる先に、爆風によって兜が脱げ落ちた騎士のその素顔が晒されていた。

 そこには、豪奢ごうしゃな黄金の甲冑とは不釣合いなうら若き乙女の風采ふうさいがあった。

 銀糸のようにきらめくつややかな髪はまとめ結われている。線の細く整った面立ちや宝石のような深紅の瞳。まだどこか少女のような未成熟さを匂わすも、それでもその容姿には艶美えんびさという華がある。

「まさか……その面差し、ルクシエラか? アストールの娘、ルクシエラだな」

 若き乙女の黄金騎士は、自分の面相をさらされたという事にまるで裸でも見られたのかという程の恥辱のを示す。

「何故お前がその鎧を着て……? ガレリアはどうしたというのだ」

「兄は、ガレリア・リタルバーグは死んだ」

「死んだ? 何故なにゆえに……」

「貴様には関係ない……私が父からこの鎧を受け継ぎ、逆賊である貴様を討つ! それ以外の事情などは不要……!」

 黄金騎士は姿勢を真っ直ぐと張り、上方の崖先からこちらを無言で見下ろす相手に剣を突きつけてそう宣言する。

 しばらく、そうして上下からの睨み合いが続いた。

 女騎士のその瞳には凄絶なまでに張り詰めた何事かの決意が見て取れた。

 対する大騎士は、顔面を覆う獅子の頭をモチーフにした大兜グレートヘルム所為せいもあってその顔色はうかがい知れない。

「誰にきつけられた?」

 やおらに、尚一層低く掠れた声で大騎士がそう問うた。

「答えよ、誰に焚きつけられてここまで来た」

「誰でもない! 私自身の意志で、父の無念を晴らす為! 皇国の平穏を護る為! 悪へと堕怠だたいした貴様を討ちに来た!」

「……嘘だな」

「――⁉」

「アストールやガレリアであるならばともかく、女の身上であるお前を〈アルコンの戦鎧〉が選ぶはずはない。あるいはそうか、この世に二つとない伝説の宝具を身につけておきながらその程度の力――未熟さ故ではなく、真に選ばれていないお前だからその程度しか発揮できぬのか」

「おのれ――愚弄するか⁉」

 大騎士の言葉にいきり立つよう、黄金騎士は剣を振り払った。

「今一度く――ルクシエラよ、誰に焚きつけられた? 選ばれし者のみが力を授かるというその伝説の宝具……それに浅ましい細工を施し、お前を我が許へと向かわせたのは一体誰だ?」

 深く静かにとすら表現できた。それでいて底知れぬ迫力を秘めた声で黒騎士は再び問うた。

「私の意志だ!」

 吐き捨てるように声を荒げた後、また緊張の糸が引き絞られるような沈黙が両者の間に続いた。

「答える気はないか」

「貴様には関係のない話だと言っている!」

「何も知らず、何も見えておらん哀れな小娘よ……失せい、真たる継承者ではないお前に何の価値もない」

 崖上の黒騎士は無造作に掴んでいた大斧を収め、脚下きゃっかの黄金騎士に一瞥いちべつもくれる事なく背を向けた。

「――待て!」

 取り残される形となった黄金騎士は軽やかな身のこなしで急勾配な崖を駆け上がる。そして何の感慨を表さぬようなその大きな背に追いすがる。

 緩慢とも取れる歩調の相手を直ぐさま追い抜き、その眼前へと踊り出た。

「失せよ。もはやお前と戦う理由もない」

「勝手な事ばかりを……! 貴様にその理由が無くとも、私には父の遺恨を晴らし、我が祖国の未来を守護するという義がある! 貴様のそっ首貰い受けるまでは!」

「父のとむらいを望むのならば、墓前にて静かに祈りを捧げるがよい。皇国の行く末など、お前のような小娘一人の手でどうなるものでもない」

「……どこまでも……どこまでも愚弄ぐろうするか‼ アラン・マグフィ⁉」

 たかぶった怒声と共に剣先はひるがえり、黒騎士の喉元のどもとへと吸い込まれていく。

 だが今度は斧で振り払う素振りも見せず、ただ眼前へと到来する白刃を強引に片手で引きつかむ。

 一瞬でね上がった剣先を篭手こてで力任せに掴みとってみせた。

「お前では我を討ち果たすどころか、傷をつけることさえ敵うまい」

 両腕にあらん限りの力を込めてその制止した切っ先を振りほどこうと躍起やっきになるも、その効果は一向に現れない。

 ならばと黄金騎士は三度、術言を唱えて刀身にあの白緑の炎を宿す。

 だがそれですら漆黒の大騎士に何の揺らぎも与えられぬ。

「大人しく去れ」

 片腕で握った剣先を横合いへと振り払うと、女騎士のその身までもがいとも容易く地面へと放り落とされる。

 子供のように放られた相手を捨て置き、まるで無感動にその場から離れ往く大騎士。

「――アラン・マグフィ!」

 食い下がるようにそれでも立ち上がり、大声を張り上げる。

 その彼女の片手に、激しい色合いを凝縮したような不可思議な輝きを放つ水晶石が一片いっぺん握られている。

「私では貴様を傷つけられぬと、そう言ったな⁉」

「その石……――まさか⁉」

 それまでほぼ無感情であった黒騎士が、ここに来てその声に驚愕の色を際立たせた。

「その言葉――撤回してもらうぞ!」

 片手に握った水晶片を剣の鍔元つばもとに合わせるよう重ね、またしても口の中だけで何事かを唱える。

 すると光が刀身を覆う。

 しかし、今度のそれは先程までとはかけ離れた様相をていしている。

 それまでは淡くにじむように刀身が白緑に輝いていたが、今度のそれはひたすらに強く激しい――まるでさんとした太陽のような、視界が奪われんばかりの輝きを灯している。

「よせ! その力は――」

 陰惨とした荒野に出現した太陽に似た強い光。

 大騎士は光にかすむ視界の中で、その影すら捉えられなくなった相手に対して制止の声を張り上げた。

 だが女騎士は相手のそんな言葉を耳朶じだに触れさせる間も惜しむかの如く、光源と化した剣を流れるように構え直し、眼前にいるであろう敵目掛けて大上段から剣を振り抜いた。

 途轍もない規模の閃光と轟音が荒涼とした大地を割らんばかりの勢いで貫く。

 振り抜いた剣から飛ばされた光波が、身を固めて防御の姿勢を取っていた大騎士を盛大に穿つ。

 先程喰らった技とは、まるで光の密度――あるいは単純にそこに宿ったエネルギーの総和が桁違いのもの。

 爆音が黒騎士どころか地面をも揺らし、後方に鎮座している半壊した古城までをも根こそぎ吹き飛ばす威力であった。

 青紫のもやを吹き飛ばし、大地を抉るほどの筋がその場所には刻まれていた。

 だが、それでも漆黒の大騎士はその場に足を着けていた。

「……やはり教会連中が絡んでいるか」

 しかし無事という言葉では表せぬ状態。

 耐え切れぬように膝を折り、地に掌をつけて屈み込む大騎士。

「はぁっ……はぁっ……」

 対する黄金騎士の方もその呼気は荒い。

「愚かな娘だ、現世を歪ませる禁忌の力……欠片とはいえあの〈次元回廊の魔石アルカヌム・マギラピス〉を持ち出してこようとは」

 苦しげにそう吐き捨てる相手を変わらずの悲愴さで睨みつける女騎士。

 そこで、その目色を驚愕に塗り替えた。

 視線の先、満身創痍そういに膝をつく巨兵――その肩から胸元にかけて空いた鎧の隙間から見えるもの――それに彼女は驚愕した。

「その肉体、それが悪魔に魂を売って得たものか……!」

 分厚い鋼鉄のプレートは焼き切られ、黒騎士の肉体がその傷口からあらわとなるはずであった。

 だがそこに人の身体などありはしなかった。

 そこから見えたもの――それは複雑怪奇に入り組んだ機械質の様々な部品。

 歯車や鋼線などが張り巡らされ、その骨組み形成するものまでもが鋼鉄の質感を有していた。

「魔鋼の王の正体がそれか……」

「見ての通りだ、我が肉体を滅ぼす事に然して意味はない、なおもってそれを願い――あまつさえ世界を歪ませる力まで行使しようとは」

「そのような繰言くりごとにもう惑わされはしない! 今のその醜い姿こそが、貴様が悪魔の手先である何よりの証拠だ!」

「……もはや語るに及ばずか」

「この一刀を以って貴様に幕を引いてくれる‼」

 握り締めた水晶片と剣を今一度重ね合わせる。

 両の足を肩幅に開いた仁王立ちの状態で高々と剣を掲げると、その強烈な光芒こうぼうが灰色の天にまで伸びていく。

「愚かな……たとえ片鱗であってもその力、世界を変容させる引き金となるのだ」

 眩い光源を頭上に広げ、黄金騎士は地を蹴った。

 光の粒子は舞い上がり、単色モノクロの世界を不躾ぶしつけに染め上げていく。

 地を踏む足取りにも、その剣柄を力強く握りこんだ両掌にも、そして激しい感情を映すその瞳にも、一切の揺らぎのない確乎かっこたる信念が宿っていた。

 まとめつけるように造作なくわれていた長い髪が余波を受けて振りほどかれる。その艶やかな銀髪に、光の粒子はさらに乱反射する。

 一切の迷いもなくただ目的を遂行しようとするその若き騎士の相貌は、得もいわれぬほど美しいと言えた。

 今まさに極小の太陽となった剣が、黒騎士のそのさらけ出された箇所へと一直線に突き刺さる軌道を描く。

 瞬間、広大な荒地全てを照らし出すほどのきらめきが拡がる。

「アストールよ、すまぬ――」


 〈地の果て〉ゾルンに今、白夜を思わせる光の柱がそそり立っていた。



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