『大は小を兼ねるのか』

 『大は小を兼ねる』


 私の嫌いな言葉だ。


 言っておくが私はモテる。だがそれは外の話だ。私の家には淫魔が棲んでいる。


 姉だ。


 私はこの姉に何度彼氏を寝取られたか知れない。いや、実際に寝取られたかどうかは知らない。だが、私は同じ女として劣等感を抱かなければならないのだ。なぜなら


 私が貧乳だからだ。


 対して姉は爆乳だ。形も良い。彼女は女としての最高の武器を所持しており、家に連れてきた男どもはパブロフの犬のように姉の忠犬と成り果てるのだ。


 まあ、男だって同じ事が言えるだろう。男でも女でも大きさは正義を誇る。


 なので私は今の彼氏を家に入れたくないのだ。何故って私、今までは顔が良いからとか、オシャレだとか、外観で選んできたが、彼は違う。彼はとても優しい。顔なんて普通でも良い。少しブ男でも愛嬌ってものだろう。だが性格だけは相性ってものがある。


 あとは性的な相性だけだが、こればかりはトラウマもあって、やはり姉にだけは会わせたくない。


「なのに何故カフェここにいる!?」

「あら、酷い言い方ね? ところで坊や、お名前は?」

「はい、妹さんとお付き合いしている佐武雄です」

「雄くん、私は小夜子の姉の香里奈よ。覚えた?」


 さり気に彼の横に座るのやめて。そして何? その大きく胸元が開いた服! そしてボディラインを強調するようなタイトなミニスカート! あざとさが際立つストッキング! もはや公然わいせつ罪だわ! 彼も目のやり場に困りながら、話しかけられると見ないと仕方ない感じ。


 終わった。


 そう確信した私は席を立った。


 その時。


「小夜子さん! どこに行くんですか!?」

「え?」

「だってその爆乳女と楽しそうに話してるから⋯⋯」

「僕は爆乳になんて興味ない! むしろ貧乳派です! しかもこんな開けっぴろげに公然とわいせつなものをぶら下げてる女性になんか興味ありません! あ、失礼。お姉さんの前で言い過ぎました」

「そんなこと言いつつ見てたじゃない!」

「小夜子さんのお姉さんを無視するわけにはいかないでしょう!? それに僕は小夜子さんの胸を見たくて仕方ありません! その貧乳を見せてもらっても構いませんか!?」

「雄くんのばか! 貧乳貧乳言うなっ!!」

「すみません⋯⋯」

「ちょ、ちょっとだけだからね?」

「え?」


 世の中にはこんな稀有な人もいる。


「雄くん、ほらほら、触りたくない?」


 世の中には負けを認めない人もいる。


貧乳小夜子さんを触りたいです」

「ばか!」


 ∴必ずしも大は小を兼ねない。





        了




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る