『日常』

──PPP⋯⋯


 ガチャン!


「ふあぁ、むにゃ、もう朝?」


 私はまだ眠い目を擦り、時間を確認すると、ムクリと体を起こした。

 ベッドを降りて、スリッパを履いて、カーテンを開ける。まだ暗いが、東側の空が明るんでいる。


 秋晴れだ!


「好し!」


 キッチンへと移動して、ケトルに水を注いでコンロに火を付けた。


 音楽を流す。今日はピアノラグミュージックだ。


 たっぷりめのマグカップにドリッパーとフィルターを置いて、コーヒー豆をスケールで量って、少し多めにミルへと入れる。


 コリコリ、コーヒー豆の香ばしい香りが立ってくる。手に伝わる豆を挽く振動も心地良く、私の好きな工程だ。


 それをフィルターに入れると、少しゆすって表面を平らにする。

 ケトルのお湯をポットに移して、コーヒー豆の上にお湯を置くように、ゆっくりと回しながらそそぐ。


 ああ、良い香り。


 この間にトースターへ食パンをセットする。

 コーヒー豆が膨らんだのを確認すると、残りのお湯も流し込んでゆく。


 チン、トースターにしっかりとバターをぬる。この時バターをケチってはいけない。これでもかってくらいたっぷりぬりつけてやるのだ。


 コーヒーは少し濃いめ、これが私流。


 そして香りを思い切り吸ってから、ミルクを少しだけ注いで、すぐに飲める温度にする。


 トーストを皿に移し、軽く塩をして、コーヒーとともにトレーに乗せ、いざリビングへ!


 スマホの音楽を消し、テレビのニュースをつけると、トレーをテーブルに置いて、背もたれにドッカとのしかかる。


「ふう⋯⋯」


 このコーヒーとトーストの焼ける匂いが合わさると、馥郁とした良い香りが部屋を支配する。


 これが私の日常。


 これが私のルーティンだ!


「⋯⋯」


 ⋯⋯。


「⋯⋯」


 ⋯⋯。


「いや、誰!?」

「ヌコだ」


 そういえばそんな奴がいたっけか。


「吾の食事はどうなっておる?」

「そんなもの知らないわよ」

「吾はチュールとやらを所望する!」

「買って来ないと無いわよ?」

「どこに行けば買えるのだ?」

「あんたお金持ってないでしょ?毎日ぐーたらしてんだから、働いたらどう?」

「働く⋯⋯だと?」

「そうよ? 猫カフェとかどう?」

「ヌコだ!」


 ボフ、と煙がヌコの体を包み込み、人型となった。


「見ろ、吾は猫ではない」

「⋯⋯コンセプトカフェね?」


 猫耳と尻尾は隠せないんじゃ仕方ない。


「よし、行ってくる!」

「ちょ! あんた、服くらい着なさいよ! ねえ! ちょっと!」


 もう、私の日常返して!





         了




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